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憑神 つきがみ

6/27鑑賞

 今年見た邦画の中ではなかなかいいとこいってると思います。鬼太郎がキャストで
魅せた映画なら、まさしくこちらはストーリーで見せた映画。
 しかも幕末!幕末というだけでポイント5点くらいつけてしまうわたくしとしましては、
なかなかにおいしい話でした。幕末なのに新撰組が出てこないってのも憎らしいね。
いやホント…ちょっと名前だけでも…(笑)。まあ舞台が江戸だっつーんでそれはそれで
仕方がないのですが。
 この当時の「首都」は京都であり、江戸といやあ「あの田舎」って感じでしたしね。

 あとそれから、映画終わった後に「つまんない!」「オチが弱すぎ」「意味わかんない」
と随分でけぇ声で怒鳴りながら歩いてくるおばはんがいたのですが。
 友人に話したいならもっと小さい声で話せよ。そんないかにも「自分は映画通です」みたいな
評論を周囲に聞こえるように話しながら歩くんじゃねーよ。通でもなんでもなさそうだけど。
 つーかこの映画のオチがわからないってんなら、シックスセンスもサインもラッキー
ナンバー7も面白くないんだろうな。自分の無知を大声でしゃべって楽しいんですかね。
 人の評価はそれぞれですが、胸のうちにしまっとけよと。


 冒頭で流れた映画CM、ドルフィンブルーの告知してました。松山ケンイチ主演の映画
ですよぅー。なんか面白そうなので見たいけど、こういう感動モノは苦手です…。しっかし
ケンちゃん、ロボのおもかげがまったくなく、さわやか好青年になっていたのはさすが。
やっぱり最有力演技派といわれるだけはある。
 
 さてさて映画にまいりましょう。
 時は幕末。丁度徳川慶喜ことけいきさんの時代でござんすな。
 尊皇攘夷、公武合体だのなんたら派なんたら派で日本史の苦手な私を逆切れさせた
時代です。(勤皇攘夷と尊皇攘夷、左幕・倒幕など)
 ともあれその時代に江戸で貧乏暮らしをしていた侍が主人公です。
 この時代の侍といや、もう殆ど立場が保証されていないも同然であり、日頃酒を飲みながら
日本の将来を語ったところでどうにでもなるものではない、というのが実情でござんした。
 でもって御家人の別所彦四郎こと彦さんも、家康公より直々に代々将軍の影武者の役割を
承りながらも、あんまり仕事がないような家の人間でした。
 しかも結婚して婿養子に入った先で部下がモメごとを起こしたために責任取らされて離縁。
出戻りで兄の家に居候状態。これはこれで肩身が狭い。

 ニ八そばを食っておりましたところ、昔の旧友榎本武揚に出会いまして。
 そば屋の亭主にゃ「かたや出世頭、かたや…」と同情される始末。
 どうでもいいけど榎本さんの軍服のそでの紋章。ミツカンみたい。あの、酢とか売ってるとこの
しるしね。
 ともあれ亭主から、「みめぐり神社に参ると出世するらしい」と聞きまして。
 ちなみにニ八そばというのはそば粉8、小麦粉2の割合で作られるごく一般的なそばです。

 ぐでんぐでんに酔っ払った彦。文句を垂れつつ竹やぶに転がり込んで見つけたのが三巡神社。
よせやい、こんな林に埋もれてるような、崩れかけたお社を拝むモンじゃないやい…とか思うの
ですが、そこは酔っ払いの怖いものなしなとこ。拍手を打って拝んじまうわけですな。
 
 さぁて翌朝お母さんにたたき起こされた彦さん。飲みすぎて具合が悪いが、彼を身なりの良い
商人が送ってきたという。心当たりのない彦は、「向島の稲荷…じゃなくて伊勢屋です」とか
てきとうぶっこいてますがな。
 ここでお母さんが布団をたたみながらさりげなくゴミを着物のたもとにしまうわけなのですが、
芸が細かくて好きです。
 
 んで彦さん、昨日の社を探しに行くわけですが、そこに現われたるは傘を持ったいかにもあやしい
人間。でもって彦がお母さんに言ったとおりの口上を言うわけですよ。すなわち、伊勢屋だと。
 で、芸者を呼んでどんちゃん騒ぎ。それはそれは。もういなり寿司もってきてる時点で怪しい
と言ってるも同然ですが。
 彦、何を思ったか「稲荷の使いだな」と大喜び。
 ところがどっこい、貧乏神だと聞いた途端態度一変。
 …まあ貧乏神にとりつかれたといって喜んでいる人がいたら見て見たいものですが。

 ちなみにこの芸者遊びですが、昔ながらのしきたりがありまして。
 ちぃとうろ覚えなんで違っていたらすみません。
 一見さんお断りのところでは、まず紹介者に連れてきてもらい1回目が顔見せ。初会。
この時は芸者さんとか舞妓さんはお金以上のサービスをします。それは2回目も来て
もらうため。だから2回目にきてもらえないと、芸者側の恥といわれます。
 また、客側も紹介してもらったからといって2回目何もなしで行ってはダメで、2回目も
紹介者さんと一緒が常識。
 次に2回目は「返し」。人付き合いの上で1回行って終わりというのは、一見さんお断りの
店ではあまりしないほうがいいです。
 そして3回目が馴染み。ちなみに3回目に店へ遊びにこないのは客側の恥といわれ、
ケチな客として嫌われます。また、金を払っているからとセクハラをしたりするというのは
最大のタブー。
 つまり芸者さん遊びを通風にしたいとおもったら、最低3回は通わないと粋じゃない、って
ことですね。
 昔庭に積もった雪を肴に芸者遊びをしながら酒を飲んでいたやつがおり、そこへそいつを
腹立たしく思う人間が庭へ小判をばらまき、それに群がる芸者さんに、庭の雪が台無しに
なったことを笑って立ち去るみたいな話がありまして。誰だったかなぁこりゃあ。
 こいつは芸者も小判ばら撒いた方も無粋ってなもんです。ま、この話はもともと、どっちも
どっちなんですが。
 
 さてさて。
 そば屋の亭主に相談したところ、どうも参った神社が違っていたらしい。
 そりゃ向島だっつってんのに、近くの神社に参拝しちまったんだから彦が悪いだろ。
 本物の「みめぐり」神社は三囲神社、というらしいです。
 そこへ母親が走ってきました。
 聞けばあのバカ兄が借金こさえて、俸禄米を差し押さえるといわれたとのこと。
 でもって兄は呑気なもので、お徒(かち)の株を売れば500両になるという。
 この「お徒」ってのぁ要するに、武士の身分の一つですな。うーん…つまり肩書きを金で
売るって話です。
 ただし、500両なんて価値もちろんありません。…徒だけに。
 いやダジャレはともかく、徒ってのぁ武士は武士でもいっとう下でして、馬に乗れない、いわば
歩兵ですから。まあ将軍家影武者という肩書きをつけるにしてもそんなもん売ったら大問題
ですから、500両ってのが無理な話です。
 私はこの兄さんの方が貧乏神に見えますが…。

 彦は何とかしようと、離縁された嫁さんの家に行きますが当然たたき出され。
 ところがどっこいそこの下男、小文吾から衝撃の事実を知るわけです。
 離縁は義父井上なんたらの仕組んだ罠であり、つまりは家督を継ぐ子供が出来たら
彦はもう用済みなので追い出した、ってなわけで。
 それを知って怒り心頭で井上家へ向かう彦ですが、その折に貧乏神と出会います。
 …ってか引きとめようとした小文吾を投げ飛ばしたのはいいけど、あんた、稲荷の鳥居
折ってんですけど…。いいのかその辺のことは。神様は祟るぞ。
 どうでもいいけど、彦と小文吾が話している茶屋。お茶が湯気立ってるとこ見ると本当に
暖かいお茶なんでしょうな。

 んでまぁ、俸禄米差し押さえのことも、お徒株売っても意味がないことも貧乏神の仕組んだ
ことと知り、彦怒りまくり。
 そこへ頼もしい助っ人小文吾が、貧乏神を見て慌てて九字を切るのですよ。お前よくこんな
こと知ってたな。つか九字が効く神様ってどんなんや。
 ともあれ、苦しんで貧乏神は、宿替えを提案します。この宿替えは落語のそれとはまったく
関係なくて、要するに災難をもたらす相手を変えようってな話なんですな。
 そんで彦は、井上なんたらに宿替えしろというわけです。
 ここの九字を切られて苦しんだり、逆切れする貧乏神はなかなか面白いので必見です。
頑張って九字を唱えている小文吾さんにも注目です。佐藤さんガンバってんなー…。

 さてまあ無事(?)井上家にはわざわいが降りかかりまして。
 失火をしてしまうわけですな。
 でもって彦の方はというと、俸禄米差し押さえなんてうちの者が勝手にいってすまんかった
と、詫びに米一俵もらってほくほく、とりあえずの問題は片付きました。
 ところが、井上家で火事が出て、自分の女房子供まで焼け出されたってんで貧乏神に
怒るわけですよ。。
 …いやあんたね。一緒の家に住んでいてそこが火事になったら普通一家全員焼け出される
わけで。
 「八重らまで焼け出されてしまったではないか!」って怒るのは筋違いだと思います。
 ともあれここらでの見所は、彦がお母さんのおにぎりを妻・八重に届けに行くところで、
八重さんが別れ際、木のねっこにけつまづいているのにOKテイクになっているところでしょうか。

 さてこうして役目は終えたと帰っていく貧乏神ですが「三巡」というからにはまだまだ災難は
あるということで。しかもこれは宿変えにはならず、彦にくるらしく。
 大変でやんすなぁ。
 それもこれもあんな神をおがんじまった自業自得と。
 …ま、疫病神とくりゃ後は大抵死神ですが、そうであれば朽木白哉かレムあたりを希望します。
(死神違い)
 
 江戸はものすごい豪雨に見舞われまして、彦も当然土嚢を積み上げる手伝いに借り出されます。
ところが兄はさっさと逃げ出してしまう。なんたる体たらく。こいつこそ祟られればいいのに。
 そんな兄さんの働きっぷりは有名なのか、翌日おえらいさんがきて、「このまま怠けている
ようならお役目ご免も考える」みたいなこと言うんですな。そりゃそうだ。ろくに働かない人間を
雇っておくほど甘くない。当時は組合とか法律なんてありませんからね。上がクビっていやクビな
わけで。

 ところが兄の方は堪えた様子もない。
 母の説教もどこ吹く風。
 ひょうひょうと受け流し。
 ああ、人生こんな風に生きられたら楽だろうな…はたから見てれば殺意沸きますけど。
 ここの説教の話で家康とか真田幸村とか出てきますんで、好きな人には楽しいでしょう。

 で。
 彦さんが役目を継ごうかって話をそば屋の亭主と話していた時に現れたのが疫病神ってんで。
何とも間の悪いお人だ。
 そば屋の亭主が食って掛かったり、宿替えの話を持ち出したりしてみますが聞く様な相手ではなく。
 その日から彦は寝付くことになります。
 そんで、まあ一応兄から引継ぎの儀みたいなのをやるのですが。
 えー…監視・掃除を命じられている影武者用の鎧を保管してあるところ。
「蜘蛛の巣が張っている」とかいうレベルじゃないんですが。これどこの廃墟だよおい。
 ほんっっっと兄じゃなくて彦さんが家督つぐべきなんだよ。
 ちなみに出勤は朝4つから九つと言ってましたから、10時から12時まで。たった2時間の勤務?
そんなんでいいのか。

 彦がお役目を継いだということで彼の家ではどんちゃん騒ぎ。…おいおいちゃっかり厄病神が
いるのですが。力士という触れ込みだから堂々といるのか。
 それを離れで見守る彦と小文吾。ちなみに小文吾は井上家から暇を出され山伏になってました。
 厄病神を調伏しようとしますが、今回は貧乏神と違ってまったくききゃしねえ。反撃までくらう始末。

 それでも頑張って鎧の掃除をしている彦のところへ、榎本が勝海舟を連れてきました。
 …あの…勝さん…。
 あなた数年前の「新撰組!」では坂本竜馬と名乗っておいでではなかったでしょうか…?
 江口さんだぁぁぁぁぁ!
 この人結構こういう役似合ってる気がする。
 にしても、前は坂本で今回勝とは不思議な縁でやんすな。

 勝は彦さんの顔を見て驚いた表情をします。どうも上様に似ているらしい。
 そんでまあ、幕府にスカウトされるのですが、彦は返事をしませんで。
 ただ真面目に役目をこなす彼にさしもの疫病神も思うところあったらしく、意味深な発言をして
消えていくのです。
 なんつーか、いかな災いをもたらす神といえども、真面目に生きている人間に対しては
やはり神様らしく、思うところがあるんじゃないでしょうかね。
 こういう話の進み方すごい好きです。
 
 一応心配して井上家にいってみますが、義父はピンピンしているという。
 では誰に宿替えされたのか?
 なんと。
 見ている人の期待を裏切らない、兄に災いが来ておりました。
 そりゃそうだ。
 どんな神様でもあんな兄腹立つに決まってる。

 というわけで彦、正式に家督を継ぐのですが。
 家康公からの代々伝わる刀を預かろうとして兄が必死に止めるので改めてみたところ。
 刀、ぼろっぼろにさび付いておりました。
 一瞬、質にいれちまったのかと思いましたが、手入れをさぼっていたんですね。
 こんな兄でよくここまで家がもってたな、おい…。
 ちなみに「母のたっての願いを聞いてくれぬか」という母に対し「たっては聞けぬが
このままなら」と寝たきりで返す兄。随分余裕があるなおい。

 彦に疫病神は、「次の仕事が入ったからもう行く。たいした仕事はしてないから
養生していれば兄は回復する」というのですな。ええとこあるやん。
 せめてものお礼にと、彦はそばを奢るんです。あんたも本当人がいいな。

 もうひとたび災難が来るとありまして、だまっちゃいられねぇとそば屋の亭主、今度は
自分に災難をもたらしてくれ、と疫病神に直談判。ところが次にくるのは死神と聞き、
顔真っ青。逃げていきました。ま、そんなもんだ。
 一方彦はここまで災難を逃れてきたのだからと、今度は真っ向勝負のつもりらしく。
 本当にいい人だな、お前さんは…。
 ところが、家宝の刀を打ち直しに行くのですが、そこで「この刀は偽物です」と言われて
大ショック。
 家康も、影武者だからと偽物を寄越したんでしょうか?ひどいことするなぁ。それはちと
家康らしくないですね。ここのとこのエピソードはちょっと気になった。
 でも彦は「砥いで下さい」って言うんですね。えらいよあんた。
 
 その帰り、彦はおつやという少女と出会い、飯を食わせるために連れ帰ってやります。
 ところが、胃薬を飲んだと思ったらネコイラズを間違えて飲んでしまって大慌て。
 翌日、小文吾と話をしているところへなんと、わが子に襲われるのですな。
 …小文吾よ。「なるほど、葬式の前のお通夜でおつやですか」ってダジャレとか言ってる
場合か。
 その子のいうことにゃ、先日の失火の責任を取らされて井上家はお家断絶だとか。それで
彦を逆恨みして仇討ちに…って何も関係ないじゃんよこの人。お前はアホか。バカガキが。

 ともあれ実の子に襲わせるとは!と怒り心頭の彦は死神おつやを追っかけまわし。
 まあ腹が減ってはなんとやらでそばを食わせに。
 亭主が、死神と聞いて慌てて逃げていくのが笑えます。この手で金払わないでそば食える
んじゃね?
 
 彦は死神に、もう少し待てといい、月日は流れて1868年。幕府は薩長同盟に敗北し
大阪へ敗走。ちなみにこの年から大坂表記が大阪に改められています。
 彦は死神から、将軍はとんでもない人間と聞かされ、直接話をすべく、会いにいきます。
そこで顔がそっくりなことに、勝の言っていた意味を理解するのですな。
 ともあれ、将軍けいきの体たらくっぷりに疑問を抱いた彦。さて武士として死ぬとはどういう
ことか、考え始めるのです。
 死神に、「神が出来なくて人間が唯一出来ることがある。それは志のために死ぬことだ」
というのですね。
 言葉は違えど「300」という映画でも、愛するものを守るため、信念のために戦い死んでいった
戦士たちが描かれていますが、守るものが胸のうちにあるってのはすごいエネルギーを
もたらすのでしょうな。

 いろいろ考えたあげく、おつやはなんと、けいきさんに宿替えをすると言い出してしまいます。
引止めに行く彦。…ってか墓場で話すんじゃねーよ。何か映りこんでいたらどうしようとか思い
つつ画面いろいろ探しちゃったじゃないか。
 ちなみに、水戸へ逃げたけいきさんに対して、残っていた武士たちは上野寛永時に立てこもり
維新志士達と戦います。これが有名な彰義隊です。
 
 砥ぎなおされてきた刀を手に、影武者、いやさ、逃げた将軍の代理として彰義隊とともに戦う
決意を固めた彦。そんな彼の前に勝さんが現れ、お金をおいていきます。
「水戸に蟄居したのが影武者で、おんしが将軍だ」

 そのお金はそば屋に払いまして。
 つか随分お釣りがきそうだな。
 ここで掛け声を亭主がかけてるのですが。「えーいえーいよいとこらっせ」だったかな。
 どういう意味なんだろ。
 それとおつやが、彦と離れたくないとかいって「相対死というのはどうだい」とか言うんですな。
つまり心中だ。これなら自分も死ねるんじゃないか、とか言ってんですよ。
 …「前に使ったことあるんだけど」って言ってたよね?…死ねてないのではないですか?
 お前はアホか。

 ともかくこうして、彦と小文吾は彰義隊を率いて、最後まで戦いぬきました。
 将軍の影武者として死ぬ、という役割を果たして。
 そうして現代に佇む男一人。ま、原作者さんなわけですが。
 そこに社から声が聞こえてきます。
「おじちゃんはね、かっこよかったんだよ」

 ラストの歌もなかなかよかったです。
 あとスタッフの名前とかそれぞれに書いてもらったんじゃないかな。
 こういう、最後まで遊び心満点なのは好きですね。

 最初ギャグで段々と話がしまっていくってのは良く出来てるなぁと思いました。
 あと、死神が最初は憎らしくてどうしようもなかったのが、段々と可愛く見えてきます。
 演出が上手といいますか、ま、一度見て損はないと思います。



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