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イキガミ

10/17鑑賞

 原作の話をほぼ忠実に再現していていいとは思うのですが、やっばりなんていうか、
ぐっと引き込むような、考えさせられるような盛り上げ方は足りなかったと思います。何が
いけなかったのかよくわかりませんが…。
 淡々と進みすぎたからかも知れません。イキガミを配達する藤本からの視点で描かれて
いるからなのは仕方ないとしても、もっとこう、なんていうか、3本立てにするならそれぞれの
人生がクロスする部分があってもよかったんじゃないかなーと。
 マンガの見せ方そのままを映画に持ってくるとどうしても違ってきますからねえ、受け取り方が。
それはちょっと残念に思いました。

 つーか感染列島のCM見てて思ったけど、Lの映画とかブラッディ・マンディとかこれとか、
つくづくウィルステロの話が好きだよねぇ、日本人。
 本当に起きたらということで格好のネタにしやすいんだろうとは思いますが、ウィルスより
怖いのははしかとかの、今では予防接種が任意になってしまっている病気ですよ。


 で、冒頭ではこれ何巻だったかな1巻だったかな、イキガミが届いたことによって、過去
自分をいじめていた相手を殺そうとするが、時間切れで死んでしまう男性のエピソードが
さらっと登場してきます。
 何も冒頭からこんな重い話をいきなりもってこらんでも…というかさらりと描かれすぎて
逆に気の毒だ。
 ここのシーンはクラブに入っていく主人公のあとをカメラがおっかけているので、ライトが
かなり激しく点滅します。てんかんの症状とかある方は十分気をつけられた方がいいと
思います。

 次からは主人公藤本の話から。
 この国は小学校入学時に予防接種を受けることが定められ、1000人に一人の割合で
18-25歳の間にその注射の中に含まれていたナノカプセルが爆発して死にいたるという
国家繁栄法なるものが運行されておりました。これによって命の大切さをかみしめようと
いうものです。
 現代の日本ではまずまちがいなく成立しないでしょう。人の命を冒とくする行為であることも
さることながら、こんなことしたらますます少子化に拍車かかるよ。たとえ1/1000の確率で
あっても、わが子が死ぬかも知れないなんてのに耐えられる親はいませんからね。
 そこらへんは現実離れしてるから、あまり思い入れなくというか、そんなに抵抗感なく
見られるかなとは思うのですが。
 というか死刑(確定)囚でやったらいいのではとかいうのこそやばい発言でしょうかね…。

 で、藤本は無事1/1000の確率に入らなかったので、厚生保健省に入省してその1/1000の
確率に選ばれた「名誉ある」人に死亡予告書、通称イキガミを配る仕事についたわけです。
 どう見ても現代の死神ですがな。気をつけろ、そのうちオレンジ頭の高校生が死神代行
とか名乗り始めるぞ!

 研修の説明の時に、劇団ひとり演じる、同じように入省した人が「この法律はおかしい」とか
言い始めますが、眠らされて連れて行かれました。洗脳されるんでしょうな。このあたりは、
戦時中の日本の教育見てるようでやや気持ち悪かった。当時の学者さんとか職人さんとかは
もう早くも、日本の敗戦を見抜いていたようですけどね。
(学者さんは冷静に、世界情勢から、職人さんはアメリカなどが使っている爆弾を見て「使い
捨てるものにこんないい鉄を使ってる時点で日本は勝てない」と思っていたとのこと)

 ともかく藤本自身もこの法律に矛盾を感じつつもイキガミを配っているという。えっらい
ストレスたまりそうですなぁー。
 というかここの展開は原作の展開を変えてでも、ほとんど疑問を持たないで配達していた
のが、ある青年(この映画での一番目の死者・田辺翼)の死を目の当たりにして気持ちがゆらいで
いくという展開の方がより感情移入出来て面白かったと思うんだけど。
 全体的に疑問覚えつつも淡々と仕事こなしてて、確かにある部分でそれが崩れはするの
ですが、始終スタンスは国側のまんまだったから人間性が面白くないなぁーと思ってしまって。

 夜8時、配達の仕事があり、藤本は田辺翼という人物の住むアパートに向かいます。
 これ配達できなかったらどうするんだろうね。例えば本人が長期の旅行にいて伝えられない
場合とか。それだと使える権利を行使できないまま死んでしまいますよね。そうなればなんか
フォローあるんかいな…。
 気にしててもしゃーないんですが、翼君はまだ帰ってなくて、母親が応対。当然、愕然と
しますわな。
 子供が24時間後に死にますって言われたら。

 その翼君はレコーディング中。歌手なのか?と思ったら、バンドというの、ボーカルと組んで
この人はギターって感じで。B'zみたいなもんですか。(さすがにB'zに失礼やろ)
 ボーカルは自分は実力があるのに何でこんな奴とって思いがあるのと、翼が乗り気でないから
イライラしてるし。
 一応明日の7時からの音楽生番組に出演が決まっているので、それをうまく成功させれば
成功者の仲間入りと。
 
 翼君が浮かない顔をしているのには理由がありまして、彼は昔ストリートミュージシャンを
していた時のコンビがいたからです。デビューするにあたり、彼はスカウトされなかった。
 翼君だけがその歌唱力を買われてデビューしたけれども、実際は歌なんて歌わせてもらえて
いないという現状。
 そんなこんなで彼が帰宅すると、イキガミを母が握りしめていたのでした。
 いやキミ、母親の様子がおかしいと気づくのが遅すぎるから。お前母親が例えば脳溢血で
倒れていたら手遅れになってるとこだぞ。

 ストリートミュージシャンをやっていたころの翼君は「コマツナ」という名前で、秀和君と
一緒に、貧しいながらも楽しい日々を送っていました。
 一人でデビューしてからは思うように売れず、今のバカボーカルと組んで、苦労してやっと
ここまでたどり着いたのに、それがあと24時間で消えてしまう。
 
 この合間に、まだ悩む藤本の姿が描かれるのですが、あまり大きなエピソードがない
中でずーっと悩む姿というのは、なんつーか、逆にウダウダしてる印象を与えてしまう
ように思います。
 彼が大きく動き始めるのは2話以降(この映画の)なので、むしろ逆に淡々とイキガミを
配達している姿の方が良かったかもと思いました。

 翼君は、テレビ局のリハーサルをすっぽかしてレストランで食事中。イキガミを出せば
飲食代はただになるらしいけれども、彼が「こんな料理よりうまかったなぁ」と思いだすのは、
コマツナ時代に秀和君と分け合って食べたカップラーメン。
 なんかわかる気がするなぁ。
 どんなに良い素材ですばらしい味の食事を作ったとしても、最終的に判断するのは人間の
脳であるわけですから。これにはどんな食材も太刀打ちできない。天下一品のシェフが作った
料理を食べ歩いてきた人が「かーちゃんのハンバーグうまかったな」とふと思い出すように、
良い思い出の中の食べ物の方が勝ることなんて沢山ありますから。

 ふらりと工事現場で働く秀和君に会いにきた翼君は、「今夜の放送よかったら見てくれ」と
言い、テレビ局へ。
 でもっていよいよ曲を演奏するとなった時。
 彼はコマツナとして「みちしるべ」を歌い出したのです。
 思わず静まり返るスタジオ。放送をカットせずに流し続けるスタッフ達。
 秀和君も、翼君の母親から連絡を受けて、家でギターを合わせながら歌ってました。
 そして藤本も、偶然立ち寄った屋台で、命をかけて歌う翼君の姿を見たのです。
 この時彼の中で何かが変わったんでしょう。

 歌い終わると同時に彼の命の炎は消えました。
 彼が輝いた理由はたった数人しか知らない。
 
 この後いろいろと小さなエピソードがありまして、3話目の主人公たちのエピソードも
ちょびっと描かれます。
 親子でドライブ中に事故をし、両親は死亡、生き残った妹は両目を失明、兄は大けがを
したけれどもなんとか生き残るという感じで。
 それと、2話目の主人公の母、滝沢和子は議員に立候補して街頭演説してます。彼女は
国繁法支持派なんですけども、1話目ではその配布されているチラシを受け取っていた
藤本が、2話目に入るところでは受け取らない、という心理変化のエピソードはまあよかった
んじゃないかなと。
 2枚もいらんからとらなかったんだよ、という考え方もあるかも知れませんが…。

 で、3話目と2話目はちょくちょく交わってくるのでこれはなかなかよかったです。
 事故で失明した妹、さくらを、収入が安定してきたからと引き取りにきた兄さとし。
 スーツを着て彼女に会いにきていますが、実は振り込め詐欺とかで金をとってる
グループの仲間でした。まともな働き口がなかったのか、妹のために莫大な医療費が
いるからなのかは知りませんが…。

 一方で滝沢和子は、このままでは勝てる見込みが薄いとしてギスギスしてます。
つーか選挙を支えてくれるスタッフにまで当たり散らすのはよくないと思う。こういう
時こそ身内には「大変だけどよろしくね」と言っておけば自然やる気になると思うん
ですけども。

 んで、藤本は滝沢の家に配達へ行くのですが、誰も留守でいませんでした。
不在票を書いて帰ろうとする藤本。いやだなー、帰宅してこんなもん見つけたら。
 ともかく、ふと見上げたら2階に人がおったんですが、なんと首つりしようとしてる。
 藤本あわてました。
 鍵を壊して中に入り、2階にかけあがって彼を助けた。…まあ24時間後には死ぬ
人ですけども。
 ともかく、藤本はイキガミのことを告げます。
 そこへ偶然戻ってきた両親。イキガミと聞いてショックを受けるかと思いきや
和子は、「明日の演説に出てくれれば私は必ず勝てる」と選挙のことを持ち出して
きます。
 まあこれは…直樹君でなくとも追い出したくなるわなぁ。
 さしもの藤本も絶句といった感じでした。

 そうして直樹は数年ぶりの外出!…とか思ったらひきこもりが治ったわけではなく
警察官の銃を奪って逃走するという、とんでもないことをしました。今どき警察官が
一人でパトロールとかしないよ!(突っ込むとこはそっちじゃねぇー!)
 
 その知らせを受けてショックを受ける藤本。
 しかし次の配達へ向かわないといけません。ホームに立っている彼の前を反対側の
ホームですが、直樹が通りすぎました。彼は大声で呼びますが、直樹は走り去って
しまいます。お前はアホか。
 というか警察が見つけられないのに藤本が見つけるって…。

 一方でさとしは、自分にイキガミがきたことを不在通知書で知ります。
 そうして医者のところにいき、自分が死んだあと角膜をさくらに移植してほしいと
言いました。
 本来なら順番的にできないことらしいんですが、イキガミがきたことによって特権を
使えるので問題なく移植できるらしいです。
 最後に自分が妹へしてやれることがあった、と喜ぶさとし。
 すぐさくらは入院するんですが、ここで病室で話してるシーンで、後ろのベッドの患者さんが
映ってるんですね。このばーさんがいい演技するんだわー。
 かっこいいおにいちゃんの顔が見たいとか、自分がかわいいのかちょっと不安という
さくらを、さとしは冗談を言って励まします。
「お前はマジかわいいし、俺は超イケメンだからなー!」って。

 そうして、病室を出たさとしと入れ違いに、再配達を請け負った藤本が妹のところに
尋ねてきます。
 名字があっているのを確認し、ノックしようとしたところで、危なくさとしが気付いて
藤本を引っ張ってきました。あぶねぇぇぇぇぇ!
 でも、配達しにきたならきたで、こんな廊下じゃなくて別のところで話せばいいのに。
大事な話をそんなところでしてしまうから、さくらが、兄にイキガミが届いたことを
知ってしまうのです。
 角膜のドナーは自分の兄だということを知り激しくショックを受けるさくら。死亡時刻は
午前10時。手術は11時。
 そういうことでさくらは、10時を過ぎてもさとしが生きていたら手術を受ける、と断言。
もし兄が死んだら自分も死ぬって。
 さとしは「なんでこんなことした」と激しく藤本を責めます。
 何もできない藤本。

 そんな彼はホームで直樹を見つけ、後を追います。だからなんで警察が(以下省略)。
 彼は和子の演説の場に来ていたのですが、事情を知らない和子は、直樹に向かって
「私の息子が来てくれました」とかいって暖かく迎えようとするんですね。
 そのとたん響き渡る銃声に、人々はパニックになって逃げまどいます。
 親は撃たないだろう、と父親は思っていましたが、それ以上に直樹は和子を憎んで
いたわけで。
 ただ…。
 誰もいなくなって撃ちやすくなったはずの和子を、直樹は撃ちませんでした。
 泣き叫ぶわが子を抱き抱えて逃げる母親を見た時に。
 自分が小学生のころ。
 注射を受けさせまいと必死に逃げて、「直樹はお母さんが守るからね!」と言った
記憶を思い出したから…。
 拳銃を下ろした直樹に、刑事の発砲した弾丸がヒット。すげぇなこの人、真横から
撃ったのに正面から心臓に命中するって、どこの「フラタニティ」所属のヒットマンですか?
(弾道が曲がる)

 息を引き取った直樹を見て藤本は「あと1時間生きられたんだ…」とつぶやきます。
 彼の死亡時刻よりも1時間早く息を引き取ったから。
 しかし同時に藤本はあることを思いつき、走りだしました。

 彼はさとしのところに向かっていました。
 病院中の時間を1時間早めて、10時になってもさとしが生きていると思わせ、それで
さくらに手術を受けさせる方法を思い付いたからです。
 ここまでくれば重大な職務違反なのは分かっています。けれども藤本には何かせずに
おれなかった。
 病院中の職員や患者さんに話してまわり、びらも作って作戦開始。

 まあ実際の時間を進めることは、投薬の問題とかあるからできないでしょうが、
目の見えない彼女に偽りの時間を教えることはできますわな。
 テレビは点検中でつけられないとか、ラジオをわざとらしく壊すさとしのリアクションとか、
売店に行く(売店は8時開店で、7時にはまだ空いてない)と言われて、あわてて売店に
走っていく藤本とかはちょっとコミカルでよかったです。
 売店に行くのを引き留めようとするさとしもよかったなぁ。で、藤本にオッケーでて安心して
一緒に行くのとか。
 ここのシーンは唯一、ほのぼのとしていて、なんかほっとしたような気持ちでした。

 まあそうして、10時になっても彼は生きていたので、さくらは手術室に入ることを決意
します。
 ここからは麻酔で眠らせておけばいいもんなぁ。
 そうして入って行こうとするさくらに、たまらなくなってさとしは声をかけます。
「ごめん、にいちゃんウソついてたわ!」
 周囲が、本当のことをばらしてしまうのかとハッとなる中。
「オレ、大してイケメンじゃないんだわー。悪かったなー」
 それが、彼が最後についた嘘。

 角膜移植準備のために自らもオペ室に向かう途中、とうとうさとしは言います。
「なんで俺なんだよ。死にたくねーよー。なんで俺、殺されなきゃいけねぇんだ」って。
 

 それからしばらくして、さくらはさとしが用意してくれたマンションにやってきました。
目の前に広がるいっぱいの桜。そして部屋の中にはぽつんとおかれたプレゼント。
中には鏡がついているケースが入っていてついていたメモには、「お前は最高に
かわいい」と、さとしの字で書いてありました。

 秀和君はコマツナとして今日もどこかの街角でライブをやっています。メジューデビューの
話は断りました。
 和子は落選したけれども、今度は夫が選挙に出ると言いました。
 あの、法律をぶっつぶすために。

 そうしてさくらは、桜の季節がくるたびにあのメモを取り出して眺めるんでしょう。
 さとしが病院で急いで書いたメモを。

 藤本はいろいろ叱られましたがなんとかおとがめなしで済みました。
 おとがめなしっつか減俸とか再研修とかあったけどな。
 そうしてとある小学校の入学式で、ニコニコ笑いながら児童を案内する、あの冒頭の
男を見てどう思ったでしょう。
 彼が藤本に気付いたとたん真顔になる演出はよかったけど、そこで人差し指を口にあてて
「シーッ」とやれば、さらに不気味な演出になって面白かったかもです。

 あ、それから、さくら役の人の、目が見えない演技はかなりうまかったと思います。
 つい相手がセリフを言ってる時にそっちに目線がいったりしてしまいがちですが、そういう
のもなくて、うまいなぁと思いました。
 失礼ですが、目が見えない方の動作を観察されたのかも知れませんね。

 私は自分にイキガミが来たらというようなことは考えようとも思いません。
 こんな法律は絶対にあってはならないものだから。
 ただ、何が原因で、いつ、誰が突然命を失ってもおかしくないこの世の中において、
命の大切さとか、人生を大切に生きるということは大事だと思います。
 うーん…しっかし…この映画、いい内容なのに、駆け足で展開していくという感じが
否めなくて、感動できなかったのはちょっと残念。
 あと、藤本さんという人間が、心から笑えるシーンを入れてほしかったなとちょっと
思いました。たとえそれが刹那のことであっても、救いのシーンは欲しいので…。

 イキガミと国繁法は現代には不要!



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