多分花鳥風月金田一、コナン的読み物ページ映画の感想レビュー→チェンジリング


チェンジリング

3/1鑑賞

 この映画の怖いところは、最初から最後まですべてが、実話であるということです。
脚色された部分はほとんどありません。
 まったく見も知らない子供が息子だと名乗ったことも、それを主張し続けた母が
精神病院に入れられたことも、それが捜査ミスを隠ぺいするための警察の仕業だった
ことも、息子が連続殺人犯の犠牲になったかもしれないことも…。すべて、実話です。
 だからこそ、二度とあってはならない事件だと思います。


 えー、こういう前置きをしておいてあれなんですが、バタバタして映画館にすべり
こんだのが上映5分前だった上に、メモ用のペンのインクがきれてやがって、何も
メモされてませんでした。
 のでいつもより内容薄めになるかもです…(汗)。

 ちなみにチェンジリングというのはそのまま、取り換えっ子という意味です。昔、親に
似ていない子供が生まれると、妖精が、自分達の子と取り換えたのだ、という風に
言われていました。
 まあ今の時代からいや、失礼ですが不貞の子か、隔世遺伝もしくは突然変異なんかじゃ
ないかと思うんですけどね。そういうのが分からない時代は、妖精が子供を取り換えて
いったとされて、随分といじめられたりするようなこともあったそうです。

 あるところに、仲睦まじく暮らしている母子がいました。母の名をコリンズ、息子の名を
ウォルター。父はある時突然出て行ってしまい、コリンズさんが頑張ってやしなっている
みたいですね。
 時は1928.3.9。悪夢の前日のことでした。
 この年昭和天皇が即位されています。
 翌年にアメリカは世界大恐慌を起こしますね。
 まあいいけど。

 コリンズさんの仕事は電話交換手。これ今見るとすごいですよね。電話が少ない時代
だから出来る人による配線の切り替え。
 やり方としては映画で登場しましたが、受話器を持ち上げると交換手が「どちらにおつなぎ
しますか」と聞いてくるので、警察なら警察、個人なら相手の番号を伝えるというもの。
 日本では登場した時代かなり少なくて、10番とかそんな風な番号だったと記憶しています。
それが今じゃ11ケタですからね。すごいですね。
 移動にローラースケートを使ってるというのは効率的でいいと思いました。

 1928年3月10日。
 ウォルターと映画に行く約束をしていたコリンズさんのところに同僚から電話がかかって
きます。どうしても人手が必要だということで、今から出勤できないか、というもの。
 おそらく彼女はこの時に、息子一人置いて出たことを生涯悔み続けたのではないか、と
思います。
 予定より数時間遅れてあわてて帰宅すると、家の中には息子はいませんでした。
 施錠されていなかったので、「犯人」にうまく呼び出されたか、それとも施錠を忘れて
遊びにいってしまったのか…いずれにせよ、ウォルターがどこにもいないと知った時の
恐怖はいかばかりだったかと思います。
 
 ここで彼女はロス市警に通報するのですがなんとロス市警、「子供の行方不明は24時間
経過しないと探さない。なぜなら大抵朝には帰ってくるから」なんてことを言うのですよ。
 マジにぶったまげましたね。
 今は多分こんなことはないのでしょうが、こんな言い方がまかり通ってしまうって一体
どういう神経してるのかと。
 調べてみればこの当時のロス市警は、マフィアが銃持って堂々と歩いているような連中
だったらしいですから、こんなふざけたことを言うのも仕方なかったのかも知れません。
 誰の味方かって。
 そりゃ、お金をくれる人の味方でしょうよ。

 翌日やっと警察の捜査が始まりましたが、まったく捜査は進展せず、ウォルターの発見
までにそれから何と5ヶ月もの歳月を費やしたのですが…。
 警察が職場にやってきて、息子を見つけたと言った時のコリンズさんの表情が、すごい
良かったです。
 演技とは思えないくらい、自然な喜びようみたいな感じで、さすがハリウッド女優さんは
すごいなって思いました。
 でも化粧がすごいとも思いました。これこの時代特有のですか?おたふくのお面かよって
くらいものすごいんですが、化粧が。

 ともかくその吉報を届けた、ジョーンズ警部とともに彼女はいそいそと、駅に向かいます。
列車が止まるのを待ちきれず走りだすコリンズ。
 そうして息子は列車から降りてくるのですが…。
 天国から一気に地獄ですね。
 それはまったく別の子供でした。

 「私の息子じゃない。」
 
 ここは見ていてなんかもう、言葉に表せないくらい、気の毒だなと思いましたね。
やっと息子が帰ってくると思って行ったら別人で、しかも周囲は平然と「あなたの子供さん
ですよ」って言うんですよ。どれだけ怖いことでしょうか。
 それとどうしても殴ってやりたいと思ったのが、ジョーンズと本部長のデイヴィス。息子じゃない
って言ってるのに、「やつれたんだから当然」とか「5ヶ月も経てばかわる」とか。
 母親が違うと言ってるのにどうして赤の他人が息子だと言ってんのか。
 こいつらの顔をはり倒したい。
 もしくは死ぬ気弾を撃ち込んで、死ぬ気で息子捜してこいと言ってやりたい。

 混乱の中コリンズは、強制されて、「息子」の肩を抱いて写真をとられて、それが紙面を
飾るわけですよ。屈辱だったと思います。
 半ばジョーンズに脅される形で仕方なくコリンズさんは、その子を連れ帰るんですね。
それが間違いだったといったら失礼だけど。
 連日警察に来て息子ではない、と言いはる彼女をジョーンズは、警察の捜査ミスを
主張しようとしているみたいな感じで鬱陶しく思ってたようで、変わるのが当たり前とか
成長期にはよくあること、とかいってとりなそうとしない。
 いやショックで身長がちぢむっていうのは確かにありますが、それだと背骨の変形が
顕著なので、何もなくていきなり身長縮んだら、スモールライト浴びせられたか、
ベンジャミンバトン(若返って行く人)かのどっちかだっつの!
 お前の眼は節穴か、ジョーンズ。そんな役に立たん目だったらくりぬいて銀紙貼っとけよ。
その方が世の中のためだ。

 ジョーンズはある時医師を彼女の家に派遣して、少年を診察させ、「ストレスのせいで
身長がちぢんだ」と診断させるんですね。てめぇ医師もグルか。医師免許返上して
藪医者免許でも段ボールに書いとけよ。
 しかもジョーンズは逆ギレして、「息子と認めないなんて、育てる母親の責任を放棄
するつもりか」と責めるんですね、コリンズさんを。
 今ならもっと訴え出る手段はあっただろうけど、ラジオや電話程度の通信程度であり、新聞
がもっぱら情報を得る手段だったこの時代、コリンズさんの絶望はいかばかりだったかと
思います。
 その上新聞にも、やっと失踪から戻ってきた少年を、母親が虐待しているせいで彼の
形相は変わってしまったみたいな書き方をさせてるんですね。これはひどい。
 
 そんな時、教会の牧師さんから電話がかかってきます。この牧師さんはかねてから、
ロス市警の腐敗を指摘している人物で、彼女の力になりたいというんですね。
 新聞も、注意深く読めば、息子が別人になっていることをほのめかしていることがわかる、
と指摘しますが、それでも市民の大半は騙されてしまうだろう、ということも。
 怖いですなぁ。
 そして彼女に警告します。
 ロス市警が、あれこれ騒ぎ立てるコリンズさんをやっかいな人間とみなして、手を下して
くる可能性があるから気をつけた方がいい、もし戦うなら力を貸しますよ、と。
 けれどもコリンズはこの牧師さん、ブリーグレブさんの申し出を、「警察と戦う気はないので」
と一度は断ってしまうんですね。

 ロス市警の悪行が語られますがすごいすごい。面倒くさいので犯人は射殺。ワイロや
ドラッグをくれる相手は優遇。ある意味わかりやすいが、お前らが警察だというのは間違ってるだろ。
 警察というのは逮捕権などの、人権を侵害するともいえる権利がある分、その施行には
慎重さを必要とします。この時代仕方がなかったとはいえ、逮捕や拘束が私情で行われて
いいはずがありません。そんだけ腐ってたんでしょうな、この当時は。

 少し考えて、正しく戦うことが息子を取り戻すことにもつながると思いなおしたコリンズは、
少年を学校や歯科医に連れて行き、ウォルターとは別人である、という証言を得ることに
成功します。
 ってかもう少し早くすべきでしたなぁ。
 歯科医は彼を診察して、ウォルターには歯に隙間があった、これは手術によってできたが、
今の少年にはこの跡はない。絶対に別人だと言います。
(手術によってできたのか、隙間があったので手術したのかはちょっと覚えてません…)
 また、学校の教師が、もう見ていてかっこいいなぁと思ったんですが、少年を一目見て「絶対に
違うと断言できます」と。で、少年を「席に座っていいわよ」と言うのですがこの少年、席についた
とたん周囲から笑い声が。それを制して先生は「好きな席に座るんじゃないの。あなたの席に
座るのよ」と。試したんですね。
 それから、必要であれば証言もしますよ、と。この先生のやり方は実にエレガント!でした。
 どれだけコリンズさんは勇気づけられただろうか、と思います。
  
 コリンズさんは記者達を呼んで、息子は別人である、詳しいことは明日、文書で配ります、と宣言
します。けれどもその中に紛れ込んでいた、記者を装った警察官がジョーンズに連絡し、
なんと警察が自宅にやってきて彼女を無理やり連行してしまうのです。
 それをたまたま向かいの夫妻が目撃していました。

 コリンズを拘束させたジョーンズは、彼女が精神錯乱していると判断し、彼の一存で
精神病院に放り込んでしまうのです。
 病院の窓口で交わされた「コード12」という会話。それは、警察問題で収容される
人間を示します。つまり死ぬまで放り込まれるんでしょうなこれは。

 さてその一方で、道を走っている車が一台。
 乗っているのはヤバラという警察官で、クラークという少年を探していた…と思うんですが多分。
違法入国だか違法滞在だかわからんのだけど、それで、居場所であるノースコット農場に
やってきたと。
 途中彼は、オーバーヒートで停車している車に出会います。そのドライバーに道を聞いて
走らせるんですが。
 まあ気がつかなかったとはいえ。
 皮肉なもんですな、この出会いは。

 さて農場に向かったヤバラはあっさりクラークをとっ捕まえて連行。カナダに強制送還
するみたいです。
 ところでパンフレットには農場って書いてあったけど、字幕では牧場って出てたんですが。
牛はいなかったが鶏がいたので結局どっちが本当かわかりません。まあいいや。

 そのころ牧師のプリーグレブさんは、一向に姿を現さないコリンズさんをおかしいなと
思いながら待っていました。
 
 で。
 ヤバラとすれ違った件の男があわててカナダ行きの列車の切符を買っておりました。
こいつ逃げるつもりか。

 精神病院に収容され、ひどい扱いを受けているコリンズは、そこでデクスターという
女性と出会います。彼女もまた、コード12で収容されている、まともな女性でした。
 つーか名前がデクスター。ナイトミュージアムではサルの名前でしたな…。
 ともかくデクスターは、ここからは出られない、とコリンズに話します。コリンズが
医者にきちんと説明する、ということについても、まともに取り合ってもらえないからと
忠告してんですね。
 確かに警察とグルなら何を言ったところで、異常と判断されるだけだろうしね。

 つかここでビックリしたんですが、デクスターにそう言われるまでコリンズはロス市警が
まともであると信じてたみたいです。そっちの方がビックリだよ!
 あの連日の態度見ててジョーンズがまともだと思ってたのか!

 カナダに強制送還される直前だったクラークは、ヤバラと話がしたいと警察官に
頼みます。
 幸いだったのはこの警察官はまともだったことでしょうな。いや、ヤバラについても
まともな警察官だったからこそ、この事件の全体像がわかったというべきかも知れません。
 そういうわけでヤバラが呼ばれます。
 単に未練があって軽い話しでもするんだろうと思っていたヤバラ。
 その顔が引きつるのはCMのあとすぐ!
 …ではなくて、クラークの口から驚愕の事実が語られます。
 あの牧場ではいとこであるゴードンが少なくとも20人の子供を誘拐しては殺害し、
埋めていた、と。あの逃げた野郎ですね。
 自分も手伝わされていた、と。

 あまりの事実に信じられないと思いながらもヤバラは、持っていた子供の写真を見せます。
行方不明の子供たちの写真を持ち歩いてたんですかね。ロス市警にしては珍しく熱心な
警察官だと思います。
 そうしてクラークはかなりの枚数の子供の写真を「見たことがある」としてわけました。
その中に、ウォルター・コリンズの写真があるのを見てヤバラは大変な事態になっていることを
知ります。
 まさに、歴史が変わった瞬間っていうか、なんていったらいいのかな、とにかく大変な
瞬間だったんじゃないかなと思いますよ、ここは。
 
 ちなみにこの映画では語られませんでしたが、クラークは司法取引と引き換えに起訴は
免れたそうです。その後少年院に送致されたとのことです。

 ゴードンはクラークに殺害を手伝わせることによって、共犯意識を植え付けて精神的服従を
させたのだと思います。やらなければ自分が殺されるとなればクラークにとっては恐怖で
しょうしね。
 このゴードンは史上最悪の殺人者の一人なんじゃないかと思います。

 それでもジョーンズが選択したのは、この事実を隠ぺいしようということでした。
 もうこいつ人として最低だな。
 ヤバラはそんな中部下をつれ、クラークとともに牧場へ向かい、いくつかの人骨を掘り出して
彼の証言がウソでなかったことを確認するのです。
 こうなったらもう、ロス市警警部の一存なんかじゃ隠蔽しておけないでしょう。
 大量殺人なんだから。
 
 コリンズが警察の車両で連れ去られたという情報を得たブリーグレブさんは、仲間を
ひきつれてジョーンズのもとにいき、事情説明を要求します。
 そのころコリンズは、院長に、「退院したければ、ロス市警の捜査は正しかったと
認めろ」みたいな書類にサインを迫られていましたが、拒否しまくっていました。
 で、電気ショックをされる直前で、乗りこんできたブリーグレブさんによって救助される
のです。
(実際の事件では、連続殺人が明るみになった後でようやく退院できたそうです)
 また、同じようにコード12で拘束されていた女性たちも解放されました。デクスターと
微笑むコリンズさん。

 ところがコリンズさんはこれで解放されたわけではなかった。今度は、息子が誘拐
されて殺されたかもしれない、という事実に向き合わねばならなくなったのだから。
 ただ不幸中の幸いだったのは、ロス市警を訴えるために、これまで市を4回訴えて
すべて勝訴したという有能な弁護士が、無償で彼女の支援を申し出てくれたことで
しょうか。
 どれだけコリンズさんには心強いことだっただろうかと思います。

 あ、それでゴードンの野郎は、カナダの、姉の家にやってきたところを通報を受けた
警察官によって逮捕されました。

 ゴードンの裁判に立ち会ったコリンズは、こいつがへらへらと証言するのを見てどう
思ったでしょうね。
 やってないとか立派なのはあの人(コリンズ)だけ、とか言う彼を。
 警察にはめられたとかどの口が言うんだって思いますね。
 首に縄でもはめられとけよ、早く。

 一方でロス市警の聴聞会には非常に多くの市民が聞きに来てるんですね。そんな
中有能弁護士のハーンが徹底的にロス市警を追い詰めます。見てて気持ち良かったです。
 都合が悪いというだけで一方的に女性を精神病院に放り込んでいたこととか、彼らが
捜査ミスを認めなかったためにウォルターは殺されたも同然だということとか。
 ただ一つ、コリンズさんとしては、ウォルターはまだ生きている可能性はある、と
思っていたでしょうけどね。

 また、あの少年は、アーサーなんたらっていう身元がわかりました。
 ヤバラが調べているんですがひょうひようと、ロスにくればあこがれの、スターの馬に
会えるかもって思った、僕は子供だから裁かれるはずがないとかいってて、多分見ている
人達と同じ感想をヤバラ、もったのだと思うんですが、この少年をおもくそ脅してて、
クラークも監獄にいったんだ、お前だって監獄に行かされるって言ってて、ちょっとスッキリ。
 言いきってしまうのもあれだけどこの少年は、自分が一人の、罪もない子供の命を奪う
原因になったというのを理解してないんでしょうね。マジに張り倒したい。
 迎えにきた母親も事の重大さがわかってないみたいで、ろくに謝りもせず帰って行った
のはびっくりしました。
 事実の方はこうではないことを祈るばかりです。もっと真摯に謝罪してくれていれば
いいなと思います。
 いくらロス市警がずさんだったといっても、このバカガキがそもそも、ウォルターだと名乗って
いなければ、本物は生きて再会できたかもしれないんだから。

 そういうわけでロス市警のジョーンズ警部は永久停職、本部長も解任、今後は勝手な
判断で精神病院に放りこめないようにすること、というので聴聞会は終了しました。
 もうあれだ、BOSSのCMの宇宙人ジョーンズつれてくればいいじゃん。警部として。

 一方でゴードンの方も、2年の収監が決まりました。たった2年かと思ってきいていたら、
2年しか必要ないそうです。1930年10月2日、絞首刑にされるのだから。
 あわてふためいたゴードンがコリンズに駆け寄ってとりなしてもらおうとしていますが、
コリンズは知らんふり。当たり前だ。
 ただ、ウォルターは殺してない、あいつは天使だったとか言っていたのは気になるでしょう。

 ゴードンの死刑が執行される前日、このバカが電報でコリンズさんを呼び出します。
 ウォルターのことについて本当のことを言いたいからと。
 けれどもゴードンはいざ面会となると、本当に来るとは思わなかったとか、もうザンゲはした
から嘘をつきたくないとかのらりくらりかわして、結局ウォルターはどうなったのかいいません
でした。
 コリンズさんはどれだけ苦しんだだろうかと思います。
 行方不明の子が、生きてるか死んでるかわからないまま、帰宅を待ちわびるのって、
言葉では言い表せないくらいの苦しみだと思います。
 家族としては生きていると思いながらも、どこかでは死んでるかも、とフッと思ったりして
あわてて打ち消したりするのでしょうから。
 北朝鮮拉致問題とかありますが、たまに「何々さんをどこで見た」という証言があります
よね。それはとても吉報なのだとは思うのですがそのかたわら、それからどうなったかが
分からなくては意味がないとも思ったりします。
 この問題は一日も早く解決しなければいけないと思います。コリンズさんと同じ思いを
している家族がたくさんいるんですから。

 さてそれからさらに数年後。
 少しずつ笑顔を取り戻し働いていたコリンズさんのところに、ゴードンの裁判で出会った、
同じ行方不明の子供を持つ親から連絡が入ります。
 息子が見つかったという連絡があった、と。
 ここは史実かどうかはわからんのですが、ともかくコリンズさんはとんでいきます。
 同僚と、アカデミー賞はどの作品が受賞するか、彼女自身は「或る夜の出来事」に
賭けていて、それを見事当てたことなんかもう頭からすっ飛んだでしょうね。

 慎重に警察が息子さんの話を聞いているところにやってきたコリンズは、驚愕の事実を
知らされます。
 この息子もまたゴードンのところに誘拐されていて、ある日逃げようとした時にウォルターが
彼を助けてくれたこと、闇にまぎれて彼はそのままどうなったかわからないこと…。
 3人逃げたうち一人が生きてこうしてあらわれた。それならばどうして息子が逃げきってないと
いえるでしょう。
 コリンズさんの顔に笑顔が戻りました。
 今日の出来事で一つのことを得た。それは希望だ、とヤバラに語ったように、彼女はこの先も
ずっと、ウォルターがどこかで生きていて、必ず戻ってきてくれると信じることができるから。


 不幸にして、生きている間に再会することはできなかったそうです。
 けれどもこの母子は天国できっと、生きている間の出来事を楽しく話したのではないかと
思うのです。
 
 この映画で印象に残っているのは、帰宅し、自分のことを「ママ」と呼ぶ少年に対して
「私のことをママなんて呼ばないで!」とコリンズさんが絶叫するところです。
 この子はなぜ私を母と呼ぶのか、ある意味恐怖だったでしょう。
 そして、あの日自分がもっと早く帰っていれば、もっときちんと戸締りをするように言って
おけばなど、ずっと責め続けたこともあったのではないかと思います。
 そこから立ち上がって、腐敗した警察と戦ったというのはどれだけ勇気のいることだった
かと思います。
 
 警察が腐敗するとこれほど怖いことはないです。
 しかも残念なことにこれは本当にあった出来事です。
 警察は何か都合の悪いことがあれば平気で相手を撃ち殺し、市長はそれを見て見ぬ
フリをした。(聴聞会後、この市長は次の選挙に出馬を断念しました)
 つまり無法地帯のようなもんですよ。
 コリンズには支援してくれる人がいたから良かったものの、本当に孤立無援だったらと
思うとゾッとします。
 もしロス市警が腐敗してなかったら。
 もしあの少年がウォルターだと言い張ってなかったら。
 連続殺人事件自体なくなるものではありませんがそれでも、一組の親子を不幸にすることは
なかったのでは、と思うのです。



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