多分花鳥風月金田一、コナン的読み物ページ映画の感想レビュー→g@me.


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12/3鑑賞

 この映画は珍しく相方も見てまして、いろいろ突っ込みどころ満載ということで、相方の
突っ込みも入れつついきたいと思います。

 バリバリやり手で、上昇志向が強く、相手を出し抜くためなら(一応リスクを天秤にかけて)
イチかバチかの賭けもやる人間。そんな人間になれたとしたら、そのイチかバチかの
ゲーム、やってみたいと思いますか?

 佐久間は広告代理店のクリエイター。横文字で言うとカッコイイですが要するに広告屋
さんです。(身も蓋もない)
 ミカドビールというメーカーの新商品の演出を頼まれていたのですが、ほぼ成功に向かって
一直線だったハズが副社長葛城の「うちはエコ重視で行きたいから」でおじゃーん。ご飯で
作るのはおじーや。そんな寒くなるようなダジャレは置いといてですね、佐久間人生最大の
屈辱なわけですよ。まあ確かに人生勝ち組だった人間が、突然負け組みに落ちりゃ誰だって
腹立たしいわけで。

 ゆうしゃ佐久間は葛城家の近くをさまよい歩いた!
 女Aが現れた!
 女Aは様子を伺っている!
 女Aは力をためている!
 ゆうしゃ佐久間はおろおろしている!
 女Aは塀を乗り越えた!
 ゆうしゃ佐久間はタクシーを装備した!(できるか)

 というわけでですね、葛城家の塀を乗り越えて出てきた女を佐久間は尾行するわけです。
女はホテルに向かい、宿を取ろうとするのですが、見かけがどう見ても「これから花金
バリバリよーん」というケバいカッコウだったため、「満室です」と断られてしまいます。
どう考えても普通はスーツに着替えるか予約を入れるかくらいするものです。アホですね。
そんな女を佐久間は呼びとめ事情を聞きます。
 女は樹理と名乗りました。葛城家の娘で、家出してきたところだと。

 ここでまず突っ込みたいのですが、壁を乗り越えてきたからといってひょっとしたら
新手の泥棒かも知れませんし、樹理と名乗ったからといって本名だとは限らないわけ
です。佐久間君は結構お人よしですね。人生勝ち組だったようですが、勝因は何か他にも
あるような気がしてきましたよ。

 結局佐久間は樹理を家に連れ帰り泊めることにします。いやあ本当に人がいいとか
思うかもしれませんが、何らかの打算あってのことでしょう。打算はいいのですが、
シンプルな内装の割りにシーツはダークグレーだったりと、趣味がいいんだか悪いんだか
分かりません。普通は寝室というものは精神的に安らげる場所ということで、ああいう
重苦しい色にはしないものですが、恐らく佐久間君は夜な夜な金縛りにでもあっている
のかも知れないです。

 樹理はいわゆる愛人の子で、引き取られた関係で家族とうまくいってなく、家出して
きたといいます。大学生だとのことですが、テキスト代だの実習費だのを父親からぼった
くって1人で暮らしていくくらいの計画性はないものでしょうか。まあ行き当たりバッタリで
家出しているあたり計画性に乏しすぎるどころか、カードを何の考えもなく使ってすぐに
追っ手に捕まるタイプだと思われます。それはいいんですが、そこから何故「私の事
誘拐しない?」ということになるのか分かりません。
 さすがネジが1本どころか飛びまくって口からボルトはいてそうな娘は言うことが
違います。乗る方も乗る方ですが。
 そういうわけで佐久間君は彼女とで狂言誘拐をでっちあげて、葛城に一泡ふかせる
ことにします。

 誰にも見られてないと言いますが、そこに来るまでには何人も見られているわけですし、
ホテルには防犯カメラもあるでしょう。2人で話しているところを見られているかも知れませんし
なんと言うか単純というか、これで狂言誘拐成立したら警察泣いちゃうよ、みたいな。
 ただし、誘拐の方法は実に鮮やかです。パソコンで脅迫状を書き、フリーメールで
送信。なるほど、これなら身元がばれるわけが…そんなわけあるかぁ!!!!
 今時IPをとってないフリーメールはないですし、プリペイド形式にしても購入時に
身分証明書は必要です。インターネットカフェからの書き込みでも本人特定されるという
のに、自宅プロバイダーからフリメで送るとはなんだかとってもサイデリア(ワケわかんねーよ)。
 これ葛城氏が警察に届けたら翌朝くらいに警察官がドア叩きますよ、冗談抜きで。

 んで連絡方法として、アンティーク人形サイトの掲示板にメッセージを書き込ませることに
するらしいのですが…イヤだから。
 そのサイトがアクセス解析していて、掲示板もログとっていて、そこから照会されたら
どないするんですかと。なんだかものすごい最新のトリックなようでいて、実は一番足が
付きやすいやり方なんじゃないかと思うのですが…。
 しかも佐久間君、会社からもアクセスしちゃったりしてますよ?もう証拠バリバリ残し
まくりじゃないですか?ものすごい誘拐方法ですね、と。
 で、アンティーク人形というのは椎名桔平さんと藤木直人さんということでアンティーク
つながりなんでしょうか?今山陰ではアンティーク再放送していたりするし。微妙です。
 その上樹理さん、バリバリ外出歩いてるんですが。警察が動いているのならすぐ
捕まってるハズですが。

 しかしこの後の身代金引渡しに至るまでの計画は見事なものでした。
 電話の背景に電車の音を流してミスリードさせたり、紙幣も途中で変えさせたり、
一番犯人が捕まる確率が高いといわれる身代金受け渡しもうまくやったり。ただし途中
安藤という、樹理が一度モメたことがある男とニアミスがありましたが、これも佐久間の
機転でセーフ。どうでもいいですが、安藤はIZAMがやってます。IZAM…。

 さてこの誘拐劇、何度かヒヤリとする場面はあったものの、お前実は過去何回か実際に
誘拐してないか?というくらい見事な佐久間君の計画で無事成功しました。
 後は樹理を家に帰すだけ。
 未練たらたらですが佐久間は彼女から合鍵を返してもらい、身代金の半分を入れた
ロッカーのキーは今度渡すからと伝えてその場を去ります。
 後に残される樹理。どう見ても、夜道に手を縛られ目隠しをされた女性が立っていると
いうのはドッキリカメラが出てくるか、何かの撮影かとしか思えないのですが。

 会社に戻り、何事もなく日々を過ごしていた佐久間。ところがあるニュースが彼を
仰天させます。
 それは、葛城の娘樹理が、数日前から行方不明で、葛城副社長が捜査願いを出した
というものでした。
 彼は愕然としました。
 テレビに映っていた写真はまったく見たことのない女性であり、佐久間が会っていた
樹理ではなかったからです。あの日別れたはずの樹理はどこへ…?

 ここで先生、佐久間君に言いたいことがあります。
 初対面の人間のいうことを、根拠もないのに頭から信じてはいけません。ましてや、
誘拐などということをしたのですから、本当に自分が関わった証拠は最後まできちんと
消しておくことです。
 段々と油断してしまうのは、先生感心しませんね。

 そして更に。警視庁の誘拐班は動いていなかったことが判明します。つまり、佐久間は
警察の裏をかいて行動していたつもりがすべて空振りだったわけです。
 何が何だかわからないでいる佐久間の耳に、樹理の死体が発見されたというニュースが
飛び込んできました。その場所は彼が偽者の樹理と一緒に行った場所。これでは自分が
樹理殺しの容疑をかけられるのは時間の問題でしょう。

 家で考え込んでいるところに偽者の樹理がやってきます。彼女の本当の名はちはる。
つまり樹理の妹。そして樹理を殺したのはちはる。
 段々と筋書きが読めてきました。佐久間は葛城の裏をかいたつもりで葛城のシナリオ
通りに動かされてしまっていたわけです。
 じきに警察が佐久間を追い詰めることでしょう。
 完全に佐久間は葛城とのゲームで敗北してしまったのです。

 が、ここで終わってしまっては東野圭吾作品の名が泣きます。ここから佐久間の起死回生の
反撃なるか、その続きは映画館で。
 二転三転する展開と、最後の勝利者は誰なのか。最後まで予想を裏切られることでしょう。

 と書きましたが、東野圭吾作品を読んでいるとちょっとばかり予想はついてしまうので、
そう「意外!」ということにはならないかも…。ラストもちょっと不満でしたね。
 では相方の厳しいツッコミをどうぞ(笑)。

中村から
気になったポイントは2つ。ただし物語の根幹に関わる部分につき注意されたし。

□死体発見の話
 樹理、いや千春が薬でラリっていた樹理ともみ合いになり、ハサミで殺害してしまった。それを佐久間という都合のいい人間に押し付けるために今回の計画は練られたようであるが、はっきりいってそんなことは出来ない。
 ミステリーマニアなら当然知っている司法解剖(家族はこれを拒むことは出来ない)。これによって樹理が薬物常用者であったこと、さらに死亡時にも常用していたこと、ハサミによって殺害されたことはすぐに判明する。ここで矛盾点が2つ生じる。
・誘拐したのに薬物を摂取させるほど自由にさせているのはおかしい
・最初から殺害するつもりで誘拐したのであれば、薬物摂取は不自然だし、何より殺すつもりでハサミは普通使わない
 一つ目から検証していこう。
 普通成人女性を誘拐した場合は、子供と違って扱いが厄介である。声を出されないようにする必要があるし、携帯電話で通報されたり逃亡を防ぐために手足を縛り猿轡をかませる。この状態で薬物摂取が出来るだろうか?犯人のアジトで、人質を自由にさせていたとしてもまず、身体検査をしてまずそうなものを取り上げない犯人はいない。こんな用意周到な誘拐ならなおさらである。

 二つ目。
 誘拐で人質が殺される危険があるのは、誘拐されたその時と、身代金受け渡しの後である。
 誘拐した時に殺すのであればナイフを用意して殺せばいいだけである。ハサミなどという、殺しにくいものは使わない。そして身代金受け渡しの後に、例えば言い争いになってハサミでたまたま殺害したとしよう。そうなると、死亡時刻に矛盾が生じる。千春が家から逃げ出した時点で樹理は死んでいた。身代金受け渡しまでは数日経過しているので、誘拐時に殺されたとでもしない限り、どう考えても死亡時刻が合わない。が、誘拐時に殺されたとすれば凶器に矛盾が生じる。

 つまりこのトリック自体どう考えても成立せず、例えば佐久間が重要参考人として逮捕されたとしても、佐久間の自宅から血痕が発見されるわけはないのだし、葛城から聞いたことをすべて自白すれば、自宅でルミノール検査が行われるだけである。はっきり言って最終的には佐久間がゲームの勝利者となってしまうのだが。
 警察も馬鹿ではない。司法解剖の結果で容易に家族へ容疑の目を向けるだろう。土に埋めれば確かに、通常の死亡推定時刻を多少ずらせるかも知れないが、時期的に夏のようなので殆ど意味はない。ちなみに殺人については過失致死になるだろうが、死体遺棄はかなり罪が重いことも付け加えておこう。
 結局葛城は小細工などせず、誘拐の電話が入った時点で警察も巻き込んだ計画を練るべきだったのだ。ま、娘の声を聞かせてくれ、という要求だけは出来ないが。

□被害者の落としたもの
 誘拐などが行われた場合、状況証拠だけではもちろん逮捕は出来ない。この人間が人質を誘拐したという確固たる証拠、つまり物的証拠が必要となる。(状況証拠だけで逮捕されるなら、数日姿を隠して、恨みを持つ人間などの名前をあげて「こいつに誘拐された」と警察に駆け込むだけで犯罪が成立してしまう)
 佐久間が逮捕されれば自宅捜査が行われ、徹底的に樹理殺害の証拠が探される。誘拐殺人なのだから当たり前である。が、被害者の頭髪、汗、その他などそこに人質がいたという証拠は出てこず、何故か妹千春のものだけ出てくる。そうなるとどうであろうか。誘拐殺人犯と被害者の妹が一緒にいるとなれば当然共犯を疑われる。
 別の場所に監禁していたとするにしても、自動車、レンタカーも調べられるだろう。その中から果たして自宅同様被害者がいたという証拠は?出てくるわけがない。
 つまりどうあがいても物的証拠をつかむことは出来ないのだ。物的証拠がなくまた、最初の誘拐で葛城は警察に届けていないのだから、娘樹理からの電話についても本人の証明は出来ない。
 佐久間は1ヶ月もしないで釈放されるだろう。

 さて葛城はこれだけ矛盾だらけの殺人事件を、本当にごまかせると思っていたのだろうか。だとすれば、「甘い」といわざるを得ない。
 この物語の根幹に関わる部分だけに、もう少し厳しくトリックを煮詰めても良かったのではないだろうかと、非常に残念だ。


 厳しいわー(笑)。
 ところで樹理ちゃんというか仲間由紀恵ちゃんの使っていた携帯、今auのCMに出ている
せいか、錦鯉のタイルでした。すごいかわいかったですよー。

 んー、まあ恋愛に重点を置いてるのかなって感じだったので、2人の仲について
恋愛物という捉え方をするならいい作品なんじゃないでしょうか?
 原作読んでみたいですー。


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