多分花鳥風月金田一、コナン的読み物ページ映画の感想レビュー→初恋


初恋

6/24鑑賞

 これは…どういったらいいもんか。前半かなり退屈なんですよね。メインが3億円強奪の
シナリオではなくて、タイトル通り、恋が進展していく様子を緻密に描いた作品だろうから。

 主人公は高校生のみすず。
 友達も作らず、笑顔もあまり見せず、親がいなくなって引き取られた親類の家でもあまりよい
待遇ではない様子。
 そんな彼女は母親が連れて出て行った兄と出会い、彼に手渡されたマッチを元に、そこに
書かれていた店へ足を運びました。その名は「B」。
 いわゆるジャズ喫茶。ちっ、Vだったらちょっと嬉しかったのに。
 んで、そこで出会ったメンバーがいろいろいるんですが、ザコはどうでもいいとして(ひどい)、
インテリっぽい岸という人がいるんですね。
 その人は彼女に「子供がなんの用だ」なんて冷たく言うんですが彼女は、「大人になんて
なりたくない」と出て行こうとします。その途端岸が彼女の腕をとって引きとめ、仲間に向かえ
いれたわけです。つーか随分乱暴だな岸。

 みすず が なかまにくわわった!ちゃららら〜

 この岸って人が本当に昭和テイスト満載というか、モロに昭和顔なんですよ。どっから見つけて
きたんだってくらいピッタリ役にはまってる。

 この時代は警察と学生(というか若者たち)が戦っていた頃で、日々熱い論争がかわされて
いたはず。マルクス主義だとか誰々の経済論だとか。それはもう(失礼ながら)今時の人達よりも
時代を心配し、自らの手で未来を切り開こうとしていた人ばかりだったかと。
 ミニスカートが流行り始めたのもこの頃だっけ。

 そんなある時、Bに入ろうとして補導員に補導されそうになったみすず。岸が「こっちだ」と
手を引いてくれて助けるのですがかっこいいのですよ!普段はムッツリスケベ(おいおい)な
岸がちゃぁんとみすずのことを見ていた、みたいな感じで。
 でもってもう一人仲間が、ミスしたふりをして補導員に水をかけ、注意をそらす。このあたりの
打ち合わせなしでやれる連係プレーが「仲間」って感じでいいなぁ。
 岸、流石に照れたのか、「お前グラマーだな」ってみすずに言ってしばかれてやんの。はっはっは、
アホですかお前は。

 そんな岸は、実は誰よりも権力を憎む人でした。ただ、今のように石を投げたり戦ったり
したところで権力は痛くも痒くもない。ならば頭脳プレーで鼻を明かしてやるべきだと。
 彼がみすずに持ちかけたのは三億円強奪事件。
 かの有名な、昭和最大のミステリーといわれる事件です。
 最大の…というと語弊があるかも知れません。グリコ・森永事件(毒入りお菓子がばらまかれた
事件)をあげる人だっているでしょう。キツネ目の男ね。
 ただ私がこの事件こそ「最大のミステリー」だと思うのは、誰にも迷惑をかけず、誰をも傷つけず
数分間の犯行にして大胆不敵なものだったからで。
 この事件を下敷きにして多くの物語がかかれていることからしても、世間に与えた衝撃は大きかった
のだろうなと思います。ちなみに金田一少年の事件簿でも、蝋人形舘の事件だったかな、明智さんの
お父さんがかかわった、そして犯人達もかかわっていたとして出てきます。あの話好きなんですよね。
明智さんの素顔がちょっとだけ出てくるので。
 それはともかく。
 これはトリックにしても新しい切り口って感じでいいなぁと思いました。

 みすずはバイクに乗る練習をしたり、岸とともに道順を覚えたりで大忙し。ああ、この時代は
シートベルトしなくても良かったんだよねぇ。
 せっかくだから調べてみました。
 1797年オーストリア生まれ。ロマン派の代表的な作曲家の一人…ってこれはシューベルトじゃぁぁぁぁぁぁ!
(本当に気がつかずに検索語に入れてた)
 えー…シートベルトが初めて車に搭載されたのは1922年。確かクレヨンしんちゃんでやってた、
開拓時代の車初登場時代にはベルトはなかったから、その間は事故したら大変だったんですね。
 一般乗用車への搭載はさらにあとの1955年から。設置義務付けは1969年からであり、装着が
絶対的な義務となったのは1986年11月から。それまでは努力義務(つまり任意だけど出来るだけ
しなさいねという意味)だったそうです。意外に歴史は浅いんですね。ためになりました。
 あと、岸がみすずを連れてきたバイク屋さんのオヤジさんがワタリ!…いや、オヒョイさん。ワタリ
こんなところにまで!器用なんですなぁ。つかこっちは犯罪の手助けか…デスノートでは捜査の
手助けでしたが。なんでも手助けが好きねぇ。

 ただみすずは、犯行予定日が近づけば近づくほど不安になっていくのです。これをやり遂げたら
岸と会えなくなるのではと。
 女性の勘というのは本当に鋭い。
 岸はそんなことはないよ、といったけど、不安でたまらないみすずは練習をやめて一人で考える
ことが多くなりました。学校でも。
 その頃仲間達も、いろいろ抗争に巻き込まれて大怪我したりして、段々とBに集まることがなくなって
きてたんですね。
 そういう寂しさもあったんじゃないかなぁ。
 最後まで残ってくれていると思っていた岸が真っ先に消えそうで。
 最終的に結論を出したみすずは決行を決意。

 ところでひとつ。
 建物とか車とかかなり完璧に60年代が再現されていたと思うのですが、どぶ川に
浮いていた空き缶(コーヒー)のパッケージが、つい最近新しくなったデザインのものだった。
(見間違えていたらすいません)

 決行日。
 雨天決行。
 岸が言っていたとおり様々なハプニングに見舞われながらも彼女はあっさりとやり遂げたわけです。

 ただ、やっぱり岸は数日後からいなくなりました。
 彼女に、自分が使っていたアパートを残して。

 事件の後に、誰もいない別荘地にいって、勝手に一つの別荘に入り込んで、一つの鍋から
ラーメンをすすりあう二人のシーンがあるのですが、これがやっぱり昭和なんだなぁって感じで
好きですね。
 今はそりゃあレストランにいって豪華な料理を食べて…というのがデートコースでしょうが、
昭和のアベックとかってお金がないとか貧乏が普通だったからなぁ。こういうことでも幸せだった
のですよ。ってなんか年寄り臭いな。
 私もやっぱり昭和生まれの昭和育ちだから、お金にあかせたデートよりは、ひたすらドライブ
だとか、図書館で本を読むとか、映画を見て散歩とかそういう地味なのが好きですね。そっちの
方が落ち着くよ。←お前のことはどうでもいいんじゃ。

 大学生になったみすずは、アパートで一人暮らしをはじめました。
 ただ、その胸を埋めるのはどうしようもない喪失感。

 ある雨の日。
 彼女は1冊の本に走り書きされた、岸の日記を見つけました。
 「大人になんかなりたくないといったその少女に 僕は恋をした。」と。
 二人はどちらも口に出せなかっただけで両想いだったのでした。
 
 社会人になってもみすずはそのアパートに住み続けています。
 岸の帰りを待っているかは知らないけれど、前を向いて歩いていく彼女の顔には笑顔が
満ちていました。
 恐らく、そう遠くない未来、岸は戻ってくるでしょう。
 あの時いえなかった言葉とともに。


 最初も言いましたが、前半はちょっと退屈だったりします。
 ただ、その「繰り返されるかに見えた平凡な日常」が、後半の、ラストを知って初めて
生きてくるというか。
 あの中で岸はずっと、みすずへの思いを募らせていったんだろうなぁって感じです。
 そうして初めて、みすずだけの初恋ではなく「誰の初恋だったか」が分かるとともに、
この物語のせつなさとかがよくわかります。
 岸を取り巻く環境はいろいろと複雑で、容易には戻ってこれないだろうけれど、それでも
時効とかの先にこの恋は実ったと思いたいのです。

 
 三億円事件で奪われた紙幣は未だに使われていないとか。だとしたら犯人の目的は
お金ではなく、奪うことにあったのかも知れないですね。
 モンタージュも別人だそうだし、当時の警察は何をそんなにはやっていたのか…。
 ともあれこの犯人が今何をしているのか。
 タイムマシンでもない限り誰にも永遠にわからないことなのかもしれません。
 そしてその裏で密かに育っていった恋。
 心の傷に時効はなくても、いつか癒される日がくるかも知れない。
 そんな映画でした。



多分花鳥風月金田一、コナン的読み物ページ映画の感想レビュー→初恋