多分花鳥風月金田一、コナン的読み物ページ映画の感想レビュー→嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦


クレヨンしんちゃん
嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦

4/23鑑賞

 静かな池と、その後ろに広がる草むら。一人の着物姿の女性がボーッと空を見上げています。
女性はふと思い出したように池の水をすくい、飲み干します。そしてまた、空を見上げました。
何かの、思い出に浸るように。
 ちなみに今の湖などでこういうことをすると大体おなかを壊すので注意が必要です。

 という夢を見てしんちゃんは飛び起きます。きれいなおねいさんーとひとしきり喜んだ後、
「続きみよーっと」と横になりますが、左を見ればみさえが大口を開けて寝ています。右を見れば
ひろしが会社の同僚、えりちやんの夢でも見ているのかでへへへぇーとやっています。よし、
永眠させろ。
 しんちゃんは布団にもぐりこんで続きを見ることにしました。

 翌朝、実は家族全員がその夢を見ていたことが判明。いったいこれはどういうことなのでしょう。
とまあ考えているうちに何時の間にか遅刻しちゃってたりなんかして、騒がしい野原家の、いつも
通りの朝が始まるのです。たった一つ違っていたのは、シロが何かを思い出したように庭を掘り
はじめたことでしょうか…。どうした、本能でもめざめたのか。
 幼稚園では時代劇ごっこです。風間君が殿様、ボーちゃんは家老、ネネちゃんは奥さん、マサオ
君はわらじ番、しんちゃんは忍者の格好をしています。
 風間君が「この中に忍者がいる!裏切者は誰だ」と言い出します。おいおい観客に突っ込ませる
のかよと思いきや、しんちゃんが手を挙げて「マサオ君が怪しい!」と言いました。素晴らしいスカ
し方です。
 ところが風間君がしんちゃんが間者と見破り(当たり前か)、ひっとらえよと命じますが、なんの
なんの。しんちゃんは旗を取り、見事風間大名を討ち取ったのでした。

 さてさて家に帰ると、なにやら大騒ぎになっています。どうやらシロが庭に大穴を開けてしまった
様子。しんちゃんはみさえに、その穴をふさぐように言われます。ブツブツ文句を言いながらしんちゃん
がシャベルを持つと、シロは前足で器用にしんちゃんを止めます。何度やってもシロのブロックで
しんちゃんは土を投げることが出来ません。「シロー、お前キャラ違うぞー」とかいっても全然ダメ
です。なんというブロッカー。シロはバレーボール全国大会にでも出場すべきです。

 あきらめてしんちゃんは家の中へ…と見せかけて戻ってきますが、シロのぶっ飛びワンワンアタック
で撃沈。しかしそのシロの尋常ならぬ様子にしんちゃんは一緒に掘ってみることを決心。すると中
から綺麗な漆塗り(多分)の箱が出てきました。開けてみると、くそきったねぇ字で、とーちゃんと
かーちゃん宛に手紙が書いてありました。しかもそれはしんちゃんの字。
 しんちゃんは穴の中で考え込みました。あのおねいさんと何か関係あるに違いない!
と、「こうして目を閉じてー」と再び目をあけた時。
 あたりは夢で見た光景が広がっていました。
 穴も、家も、シロも、何もなくなっていました。しかしそこは我らがしんちゃん、何の疑問も抱かず
に歩き始めます。ちょっとは疑問持てよ。
 こうして運命の歯車が回り始めたのでした。

 草むらを歩くうち小高い丘を見つけて駆け上ってみたところ、目の下に広がるのは今まさに合戦
始まらんとするつわものども(ベベンベン)。一人視界に入ったは、青地に白い雲のようなものが
ついた旗を背中に背負いし馬上の侍(ベベンのベン)!そしてやあやあ真下に見えるは、今まさに
その侍をねらはんとする鉄砲を持ちし二人組。草むらに隠れて狙い打ちのようであります。
 そこへ現われたる我らがしんのすけ。今まさに歴史の戦いに居合わせたのも知らずにこの二人組
に声をかけました。
「ねえねぇ、これ何の撮影ー?」
 二人組はあわてて追い払おうとしますが、そんなことをしんちゃんが聞くはずもありません。
しまいには一人が刀を抜き振り回しはじめます。おしりを出しつつよけるしんちゃん。馬上の侍が
その草むらに見え隠れするしりに気付きました(しりかよ)。馬をはやし、侍が駆け寄ってきました。
二人組あわてて逃げ出します。
 物怖じもせず、不思議な子供に侍は井尻又兵衛由俊(いじりまたべえよしとし)と名乗り、命を
助けられたこともあって自分が仕える殿に会わせることにしました。ちなみにしんちゃんは、
「おまたいじりのおじさんね」と突っ込んでました。
 城や城下、景色を見ては質問してくるしんちゃんに、又兵衛は尋ねます。「お前、本当に一体
どこからきたんだ」と。

 お殿様に会ってもしんちゃんはマイペース。お殿様もお殿様で、いちいち目くじらを立てたり
しません。未来の話をとても興味深げに聞いています。しまいにはしりを出し始めたしんちゃん
はいたく気に入られたようです。いいのかそれで。

 結局又兵衛がしんちゃんを引き取ることになり、けつをだしたままのしんちゃんを抱きかかえて
殿様の部屋を後に。
 と、ここでしんちゃんは夢に出てきた女性、廉(れん)に出会います。彼女は殿様の娘、つまり
お姫様だったのです。夢で会ったと言い張るしんちゃんに興味を抱く廉。明日その話を聞きたい
と約束して二人は又兵衛の家に帰り着きました。
 家に帰ると、仁右衛門と吉乃という老夫婦がいました。身の回りの世話をしているのだそう
です。
 しんちゃんはそこで、又兵衛が天涯孤独の身であることを知りました。母は病で亡くなり、父や
兄弟は戦で死んだとのこと。しかしお嫁さんはいないそうです。
「お嫁さんにきてもらえないんだね」しんちゃんはいつも直球勝負です。がっくり肩を落とす又兵衛。
仁右衛門が「お前も言うなぁ」と苦笑していました。

 その頃野原家では。突然いなくなってしまったしんちゃんを心配して、みさえとひろしがあちこち
に連絡をとっていました。
 手がかりは穴としんのすけが書いたらしい手紙だけ。ひろしはその手紙を読み返すうち、ある
ことに気がつきます。「オラ今、てんしょー2年にいるゾ」という一文に。しんちゃんが過去にいる
に違いないと確信したひろしは、家中の役に立ちそうなものを探して、その時代に行くことに決め
ます。流石は戦うサラリーマン、決断も早いです。

「そんなことしてどうするの!」というみさえにひろしは言いました。
「しんのすけがいない世界に未練はない!」
 その一言でみさえも旅立つ決心をします。
「くるまできたほうがいいよ」というしんちゃんの手紙に従い、あらゆるものを載せて車に乗り込み
ました。エンジンがかかります。
 そうしてみさえはいいました。
「ねぇ、過去ってどうやって行くの?」
 考えてみればそうです。一つ目の角を曲がってまっすぐいって、三つ目の交差点を右折した
くらいでは、近所のスーパーくらいしかいけません。
 ひろしはあの穴が何か関係あるのではと思いつき、植木を倒し物干し竿をシロの小屋にぶち
あてつつ、穴の真上に。…それからいったいどうするのでしょう。
 
 その頃。しんちゃんは廉ちゃん相手にみさえとひろしの夫婦喧嘩を再現していました。廉も
又兵衛も大笑いです。そして廉は、しんちゃんに「手紙を書いてはどうか」と言います。それを
埋めることによって何かあるのではと考えたのです。筆を持ち、書き始めを聞く廉にしんちゃんは
自分で書く、と言います。廉達は驚きました。
 この時代文字を読み書きできるのは大名やその家族に限られており、農民やましてや子供は
文字を読むことも書くことも出来なかったからです。(江戸時代になるともう少し識字率は上がります)

 すらすらと手紙を、しかも横書きで書くしんちゃんを眺めつつ感心する一同。いや横書きに
突っ込んでおこうか!
 そうして廉が「これにいれると良い」と差し出した小箱は、しんちゃんが庭で掘り出したもの
でした。こうして歴史はつながったのです。
 それを埋めてこようとするしんちゃんにひとつ、廉は尋ねます。「お前の時代では、結婚はどう
なっているのか」と。
 しんちゃんは答えます。「んーと、お互いが好きって言ったらいいんだよ」
 「なんと!そんな簡単なことなのか。身分は?」
 「身分なんて関係ないよ」それからしんちゃんはもぢもぢしながら「年の差もね」と付け加え
ました。このヤロウ、ななこおねいさんというものがありながら、廉ちゃんと結婚する気まんまん
です。
 廉は、隣りの大きな国と政略結婚させられることになっていたのでした。
 「この時代はこの時代です。そんなはしたないことを聞いてはなりませぬ」というばあやの
言葉に、廉は「おぬしもそう思うか、又兵衛」と聞きました。
 「はい」
 又兵衛は静かに答えました。

 城下町を見渡せる火の見やぐらの上で、又兵衛は青空をだまって見上げています。廉は
そんな様子を見ていつも「青空侍」とからかったものでした。
 突然しんちゃんが「おまたのおじさんは廉ちゃんのこと好きなんでしょ」と聞きます。やはり
直球勝負。図星をつかれて又兵衛は真っ赤になりますが、「そんなことはない」と否定します。
それは又兵衛が武士だからであり、廉が春日城主の姫だからなのでした。しかしそんなこと
を説明されてもしんちゃんは「なんで?好きなら好きっていえばいいでしょ」と言います。
 しかも「あーっ廉ちゃん!廉ちゃぁぁん」と下に向かって手を振り、あわててキョロキョロした
又兵衛をまたもからかいます。「…やっぱり気になってるんだね」
 しんちゃんは恋愛相談室を開いたらいいと思います。

 どうのこうの黙らせて、又兵衛はしんちゃんに約束させます。この秘めた気持ちを決して
口外してはならないということを。しんちゃんに騙されて「男どおしのおやくそくー」をやらされた
又兵衛ですが、武士同士の約束の仕方、「金打(きんちょう)」をかわします。この金打、実は
てんしょー2年にはまだなく、江戸時代から始まったはずなのですがまあいいや。
正しい作法は、刀の刃かつばを打ち合わせるか、小柄の刃で刀の刃を叩くそうです。女性や
僧侶はまた違うみたいです。
 城下町は家しかありません。「お店はないの?」「月に一度、市が立つ」
 しんちゃんは言いました。「ふーん。春日部にはお店いーっぱいあるよ」
 又兵衛はそれを聞いて安心したように言います。「そうか。春日も賑やかになるのか。それは
よかった」
 そしてしんちゃんは子供達が遠く向こうで遊んでいるのを発見します。行ってみる風間君達
にクリソツのガキども。どーやらご先祖様のようです。
 一緒に遊びに行ってしまうしんちゃんに、「手紙を埋めに行くのではないのか」とあわてて
声をかける又兵衛ですが、しんちゃんはそんなことしったこっちゃありません。自分の
したいまま、やりたいままです。

 子供達はしんちゃんを秘密基地につれていってくれるといいます。そこは、しんちゃんが
初めてやってきた場所。と、人の気配にあわてて隠れると、廉が馬に乗ってやってきました。
くつろぐ廉。おっと、木の陰から廉を狙う男達が。金子目当てのようです。
 しんちゃんは臆せず飛び出します。大人を手玉に取るしんちゃんに、ついに野党どもは刀を
抜きました。フッ、しんちゃんにそんなもの通用するかな?

 しんちゃん危機一髪。と、草むらをかき分けて又兵衛が飛び出してきました。アッという間に
彼らを打ち据えて、いくばくかの金子をやって追い返します。
 「ここへはよく来たものだ」廉はつぶやきます。又兵衛と廉は幼馴染で、ここへよく来て遊んで
いたのでした。
 廉は思い切って又兵衛に抱きつきます。どっきどきの展開です。しかし又兵衛は真っ赤に
なりながら廉を引き剥がしました。
 「かようなお戯れはおやめください」
 あくまでも武士である身の上を、又兵衛は忘れなかったのです。豆腐屋の娘かよ!
(四角四面は豆腐屋の娘。色は白いが水臭い、という言葉がある)
 そしてようやく本来の目的、箱を埋める作業に。一息入れて手を洗っていると、子供達の背後
で不穏な音が。
 廉が真っ先に気付き悲鳴をあげます。すぐに廉を庇う又兵衛。しんちゃんが振り返ると、ひろし
とみさえが到着していました。お早いおつきで。

 名を名乗り、ひろしは格好つけて廉に「乗っていかれませんか」と誘います。乗り心地は?と
聞いて「とても良いです」といわれ、ぶひゃひゃひゃとニヤけたものの、助手席のみさえの刺す
様な視線に気がついてあわてて黙りました。
 そうして一同お城へ。しんちゃんはひろしに「とーちゃんもっと飛ばしてよぅ」とせかします。
鬼かてめーは。
 一気にアクセルを踏み込むひろし。ちょーしこいてんじゃねーぞテメェとか思うんですが、まあ
取り締まりもないので仕方がないでしょう。
 さしもの馬もおいつけず、又兵衛は馬の歩みを止めました。
 遠くなる車から見ている廉。
 二人の距離を現しているようでした。

 城に招かれた一行は、持ってきた材料でカレーライスを振舞います。その席でひろしは、
未来の世界を語って聞かせました。争いもなく武士もいない世界。
 「なんと、武士はおらなんだか!」
 驚く又兵衛に廉は「武士が必要ないということは、それだけ平和であるのだろう」と言い
ました。流石察しが早いな。
 それは、お殿様にひとつの決心をさせるに十分でした。

 又兵衛の家でも、ひろしが持ってきたビールでやんややんやの大騒ぎです。飲み干され
てしまったビールを見て落胆しているひろしにしんちゃんは言いました。
 「そこのコンビニで買ってくれば?」「ねーよ!!!!!」
 その頃城では、お殿様が廉の政略結婚を断る決心をしていました。
 「隣りの大国と一緒になったとしても対等な立場になるわけではない。また、そのような
大国でさえ彼らの時代には存在していない。ならば、このままであったとしても同じこと」
 廉はそれでは戦がまた始まってしまうのでは、と心配します。お殿様はなんの、と首を
振って、「子供がかような心配をするな」と言いました。
 子供を守るのは親の務め。子供の幸せを守るのも親の務め。

 ところがその心配は現実になってしまいました。隣りの国が政略結婚を断られたことを
理由に攻め込んできたのです。
 しんちゃん達を城内に避難させ、又兵衛は戦いに赴きます。ところがジッとしていられ
ないのがしんちゃん。戦火をものともせず、又兵衛の助太刀に。つーかさしものしんちゃん
も何ができるわけではなく、追いかけてきたひろしと一緒に、小屋についた火を消火した
くらいでした。(何で、かはあえて突っ込まないように)
 とりあえずその日は凌ぎ、戦は翌日に持ち越されました。又兵衛の手の甲から血が
でているのを発見してあわてて駆け寄る廉。持っていた布をまいてあげます。まんざら
でもない又兵衛をしんちゃんは冷やかしませんでした。

 深夜。又兵衛がしんちゃん達の所へやってきます。
 「油断している隙をついて、夜明け前に攻め入ることになった」と。少人数で敵の陣地
に攻め入ることは即ち、生きて戻れないことを示します。
 ひろしにも「我々の後に出れば、敵がひきつけられているうちに帰れるだろう」と告げ
ました。そして、丸腰では困るだろう、と一振りの刀までくれました。
 何も出来ない自分達をはがゆく思いながら、それでもひろし達は帰らなければなりま
せん。予め図書館で読んで結末を知っているひろしは、どうしてもそれを言うことは出来
ませんでした。
 まあ…ものすごい武器があると思うんですけどね。ひろし達が気づいてないだけで。

 門が開き、兵士達は走り出していきます。その後をひろしの車が出て行きました。
 死ぬと分かっていながらも足を止めない兵士達。ひろしの車はそれを眺めながら
あの草原に戻っていきます。
 バタバタと倒れながらも、それでも又兵衛の一軍は進んでいきます。鉄砲隊や槍が
前をふさぎました。もはやこれまでか、と思われたとき。
 轟音と共にひろしの車が突っ込んできました。
 「春日部住人、野原一家、義によって助太刀いたーす!いざー!」
 正体不明のものがけたたましい音を鳴らしながら突っ込んでくるのですから、兵は
散り散りです。流石に「鉄のイノシシか!」とかボケてる暇はありませんでした。
 負け色が濃かった戦の旗色が変わりました。しんのすけに手を振り返し、突っ込んで
いく又兵衛。
 車は丘を駆け上がり、なんと敵陣へ。
 あわててとまった車からしんちゃんが飛び降りました。
 「お前がオオ食らいだな!」
 「大蔵井高虎だ!」
 子供のボケにいちいち答える高虎、律儀にもほどがあります。

 切りかかろうとした高虎に、あわててひろしが車から飛び出します。又兵衛にもらった
刀を持って。
 ところがそれは、「あなたも1日10分で割れた腹筋に!」で有名なブルーワーカーでした
 お前はこの時代に何をしにきたんだ。
 仕方がないのでそれをブルブルふるわせて威嚇します。
 そこへ又兵衛一軍がたどりつきました。たちまちそこは戦場に。ひろしに抱きかえられて
車に戻ったしんちゃんですが、高虎が混乱に生じて逃げようとするのを見つけます。
 「逃げるなよ!」
 しんちゃんが両手を広げて立ちはだかりました。
 「おじさん偉い人だよね!?なんで逃げるの!おじさんがこんな風にしたんでしょ!逃げる
なよ!ひきょうもの!おじさんのせいでこんなになっちゃったんだぞ!」
 激昂した高虎はしんちゃんに切りかかりました。ひろしが思わずブルーワーカーで一撃!
顔面にヒットしましたが、ブルブルと振るえてました。
 怯まず刀を振り上げる高虎。と、今度こそ刀を構えたみさえが。しんちゃん、高虎のおまた
に頭突きです。
 こうして見事、しんちゃんは敵の大将をやっつけました。それを見て双方刀を納め、又兵衛
は高虎の首をとろうとします。
 「ダメだよ!」
 しんちゃんが止めました。「この人は悪い奴だけどもうしないよ!」
 その言葉に又兵衛は、高虎の髻(もとどり。侍のちょんまげね)を切り取り、これをもって戦
の終了をつげたのでした。

 又兵衛の馬に乗せられて戻るしんちゃん。その後を兵士達が続きます。
 「しんのすけ。殿から褒美が出るぞ。何かひとつ、願いを聞いてもらえるが、何がいい?」
 又兵衛はそう尋ねました。
 「んー、オラ、この刀がいいな」
 先ほど又兵衛が高虎の首をとろうとした小刀でした。
 「悪いがこれはダメだ。父上の形見でな。殿に言えばもっといいものがもらえるぞ」
 「んー」
 しんちゃんは尚も何かを言おうとしましたが、ふと前方に何かを見つけました。
 「あーっ、廉ちゃんだ!れーんちゃーん」
 「おおっと、もうその手には乗らんぞ」
 すました顔の又兵衛ですが、本当に廉が、見張り台から手を振っていたのです。心配
のあまり出てきていたのでした。
 ばあやが廉に「よかったですねぇ」と声をかけます。きっと誰もが、この先廉が誰に
嫁ぐのかを予想していたことでしょう。 
 と、突然ひとつの轟音が鳴り響きました。

 又兵衛は手を振りませんでした。しんちゃんは馬から落馬した又兵衛に驚き、慌てて
かけよります。その胸には鎧を貫通した穴が開いていました。
 「俺は撃たれたようだな…」
 又兵衛は静かにそう言いました。
 「しんのすけ。お前が何故この時代にきたのか、今やっとわかった。おれは本当は、お前が助けて
くれたあの戦で、命を落としているはずだったのだ。それが、お前が助けてくれたために、この国と、
人々を助けることが出来た。礼を言うぞ」
 腰にさしていた刀を、又兵衛はしんちゃんに手渡しました。
 「高虎の首を落とさなくて良かった」
 そう言って、又兵衛はもう二度としゃべりませんでした。
 誰が鉄砲を撃ったのか、それは分かりません。ただ歴史は、こんなにも悲しい形でつじつまを
あわせたのです。
 しんちゃんはただ泣くだけでした。


 草原で、ボーっと空を眺めるしんちゃんと廉。廉はしんちゃんに、「私はもう誰とも結婚しない。
これほど人を好になったのは初めてだ」と言いました。
 「おまたのおじさんのこと、好きだったの?」しんちゃんは尋ねます。廉はハッキリと「好きだ」と
答えました。
 しんちゃんは急いで言おうとします。「あのね、おじさんも廉ちゃんのこと…」
 「もう良い。もう良いのだ、しんのすけ」
 廉は言いました。「今更言っても仕方のないことだ」
 しんちゃんはそれ以上言わず、「金打」と言って刀を少し抜き、鞘におさめました。
 「私はいつまでもそなた達のことを忘れないだろう」
 そういう廉に対してしんちゃんは、「オラの家ここだから、ずーっと一緒だね」と答えます。
 そして一行は車に乗り込み、現代に戻ってきました。
 空は青く晴れていました。そこにひとつの雲を見つけしんちゃんは、「おじさんの旗だ!」と
叫びました。

 静かな池と、その後ろに広がる草むら。一人の着物姿の女性がボーッと空を見上げています。
その目から涙がこぼれました。
 「また空を見上げているのか、青空侍!」


 2人はきっとどこかで、幸せになれたでしょう。


 今回の得点は…99点。やっぱ又兵衛が死んだのはとても悲しかったけど、それはしんちゃんに
とても大切なことを伝えたと思うから。
 これはDVDでたら買って永久保存版にしたいくらいです。
 本当にいい話をありがとう、しんちゃん。



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