多分花鳥風月金田一、コナン的読み物ページ中村の気まぐれ法医学→1.監察医制度


1.「金田一少年の事件簿短編集6  金田一少年の回想」より

<女医の奇妙な企みについて>

この中で死亡診断書について剣持氏が語っている箇所がある。
引用させていただくと、「生きたまま病院に運ばれて医師が病状を診断したのち
治療中に死亡した場合は届け出の義務もなく〜」というくだり。

これは実は間違いである。
医師は治療中に死亡した場合でも届け出の義務を負う。
文章としての書き方によるものであろうが、多分作者は法律等を正しく理解して
いる。だが、分かっているが故に省略した為変な書き方になってしまったのだろう。

確かに医師法第21条(異状死体等の届け出義務)には、「死体または妊娠4月以
上の死産児を検案して異状があると認めた時は24時間以内に届け出の義務を負
う(要約)」とあり、治療中に死亡した場合について規定していない。しかし、東京都
は監察医制度のある区域であり、この監察医制度の死体解剖保存法第8条に「死
因の明らかでない死体についてその死因を明らかにする為に監察医を置きこれに
検案をさせ(要約/以下略)」とある。自分の稚拙な小説でも取り上げているが、死に
至った原因が不明である以上、例え治療中に死亡したとしても医師が届け出無しに
死亡診断書を書いてはならないのである。これは立派な法律違反である。

もちろん例外はあり、どれくらいだったか忘れたが長期入院で死亡した場合などは
届け出の義務はない。高齢者の死亡などはこれにあたるだろう。しかし、例えば
自宅で意識不明になって倒れ、病院に運ばれて手当ての甲斐なく死亡した場合
などは治療時間にもよるが届け出を必要とする場合がある。そこに犯罪が隠されて
いるかもしれないからである。特に、外傷が見られる場合は例外なく異状死として
届け出の義務を負う。

だからこそ、法医学者達は全国への監察医制度の配備を声高に叫んでいるのであ
る。これ以上、隠匿される犯罪のないように。医師法を知らない、矛盾した医者をこ
れ以上増やさない為に。
そしてこれらから考えるにこの事件の場合は、遅かれ早かれ真相は明るみに出た
はずである。脳出血といっても「急病」として運ばれてきたのであるから急死にあた
り、異状死に該当するはずなのだから。



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