多分花鳥風月金田一、コナン的読み物ページ小説置き場オリジナル小説目次→総理大臣、ただいま仮免中!6-2


 チャイムを鳴らそうと思ったがボタンがない。ノックをしようとして――誰もいない
倉庫にするのもマヌケと思ってやめた。
 さびかけたドアノブに手をかけて回してみたが、
「あ、開かない……」
 それどころかもげてしまった。
 ど、どうしよ。弁償かなぁ。
 とりあえず戻しておくことにする。
 えーと、押してダメなら引っ張るんだっけ?
 するするとドアノブが抜けただけだ。仕方ないので抜けた穴に手をかけて
引っ張ってみた。
「開いた!」
 ドアは引き戸になっていた。
「何でドアノブ……」
 ここにいない倉庫の持ち主にぶつくさ言いながら、中を覗くと当然真っ暗だ。
 一応、お邪魔しますとつぶやいて足を踏み入れた。懐中電灯で照らしてみると、
部屋は狭く、隅に腐りかけた机が置いてある。右側の壁に扉のへこんだロッカーが
あった。部屋全体をぐるりと照らしてみたが、他にドアはなかった。
「あれー、外から見たらもっと広かったような……」
 ふと気が付いてロッカーに近づいた。二つ並んだそれは何か奇妙だ。
 何度か見回して気が付いた。古い見かけの割りに埃が積もっていないのだ。
「僕RPGは得意なんだー」
 独り言をつぶやきながら手をかけてロッカーをガタガタ動かすと、思った通り扉が
表れた。窓ガラスの部分をベニヤで覆ってある。こちらはそんなに古くない。
 ノブに手をかけようとして、横に並ぶ数字のキーに気が付いた。これと似たのを
友達の住むマンションで見たことがある。決まった番号を入れないと開かないしくみだ。
 困ったなあ……。
「開けゴマ! なーんちゃっ……」
 冗談で押したドアが開いた。誰か、前に入った人間が施錠を忘れたらしい。
「ラッキ!」
 そっと開けたドアから光の筋が床に広がっていく。キョロキョロ首だけ出して
見回すと、目の前に木箱の山。そこに烙印してある記号はバッチリ記憶にあるのと
一致している。中を開ければあのフランス人形がずらりと出てくるに違いない。
 用心のために這ってその木箱の陰に隠れる。コンクリートの床は季節のせいか
非常に冷たく、まるで氷に手をついているようだ。急いで息を吹きかけてこすり合わせた。
 そこで少しじっとしていると、ボソボソと話し声が聞こえてきた。しかし離れているのか、
内容までは分からない。
 いつまでもそこにいたところで何も展開はないので、十分気を付けてのぞいて
みることにした。
 三つ積み上がった箱は自分の身長よりも高く、立ち上がっても大丈夫のようだ。
そろそろと立ち上がって、何だかお風呂場を覗く痴漢ってこんな気持ちなんだろうかと
思いながら、顔を出した。すぐに引っ込める。
 目の残像に、衝立のようなもので仕切られた光景が残っている。ドラマの会社で
出てくる部屋のような感じだ。そして左側の大きく開けたところに数人集まって
木箱を椅子がわりに話をしていた。一番近い衝立の陰に行けば、こちら側から誰か
入ってきても見えなくなる。すぐそこなのだが、三十センチほど離れている。いくら
何でもそこを這って行ったら丸見えだろう。
 あ、そおだ。
 そこに投げてあったベニヤ板を立て掛けて透き間をふさぎ、堂々移動に成功。
その衝立は真っすぐ続き、突き当たりが左に折れ曲がっているらしい。圭はかじかむ
手を温めながら、頭の中で見取り図を書いてみた。
 どうやらこの衝立は廊下みたいなもので、左側の話をするところと仕切っているらしい。
さっき見た真正面のドアのついた仕切りは、この廊下を通らずに話をする場所から
出入り出来るようにしたものだろう。
 いまこの廊下通る人がいたら僕見つかっちゃうなぁ。
 そうしたら謝ろうと思いつつ、圭は話し声に耳をすませた。丁度正面辺りに来たようで、
よく聞こえてくる。お尻がすぐに冷たくなって、ゴソゴソと体を動かしたあげくしゃがむ
ような格好になった。
 こういう格好でしゃがんでるとお姉ちゃん達に、みっともないって怒られるんだよなぁ。
「……ということで通信衛星は落下への秒読みに入りました。こちらの提示した時間まで
あと十九時間四十五分ですから、それまでに政府が何らかのリアクションを起こさ
なかった場合、落下プログラムが作動することになります」
 あらら、それってまずいんじゃない?
「分かった。――チャイルド」
「はい」
「ライフラインの確保は」
「は。政府が非常態勢を敷いたため、一週間ほどは外部と接触を断ちましても持つと
思います。それだけあれば供給先を制圧下におくことが出来ます。例え、一時的な
政権明け渡しを行い、隙をみて我々を確保する作戦を狙ったところで、今度は
都民の生命の危機が訪れる訳です。つまり正式な明け渡し以外に政府が打つ
手はありません。そして我々は形骸化した政府に代わり新たなライフラインを
提供出来る救世主として歓迎されるでしょう。政府のコンピュータが使えるように
なったところで手遅れです」
 言葉が難しかったが、大体国の乗っ取りをしようとしていた人はこの人達だと
見当がついた。
 どうしよ。僕が今出来ること……。
 携帯電話、はなかったんだっけと思い出す。あれ? じゃあさっきからこの辺が
重いのは?
 それが内ポケットだと気づいて手を入れてつかむと、全然電話じゃない手触り。
恐る恐る引っ張り出してみると、黒光りする拳銃。
 あ、あの副総理さんにもらったんだっけ。
 テレビではよくこれを持って「動くな!」と叫ぶと悪者達は手を挙げる。
 よしこれでいこう。
 と思ったがここから向こうに行こうと思ったらまた戻らなければならない。
「この国は改革されなければならない。話し合いだけでは解決しないこともあると
いうことを、彼らは知らなければならない」
 何言ってんだい。皆迷惑してるっていうのに。
「そう思いませんか、――総理」
 さすがにこれには飛び上がった。いきなり目の前の衝立が倒れて、そばに立っている
軍服に身を包んだ、がっしりした男が見えた。少しはなれたところからも男達がこちらを
見ている。今話していた男達らしい。ややあって向こうの衝立のドアからも軍服の
男女が出て来た。目で数えると、合計十人。ちょっとどころではなく、ものすごくまずい
状況だ。
「ようこそ、総理。“ナイツ”からおいでになることを聞き、お待ちしていましたよ」
「え? ナイツ?」
「官邸にいる我々の仲間です。これから総理がそちらに向かう、と連絡をくれた
のですよ」
 どうりで、侵入がたやすく成功した訳だ。
 圭はがっかりして立ち上がった。ズボンは這って歩いたお陰でほこりまみれに
なっている。
「これが、本当に総理?」
 腕組みをしてふんぞりかえっている、偉そうな男の隣に立っているひょろ長い男が
目を見張った。
「こんなのが頭になるようじゃ、各国から馬鹿にされるわけだ」
 背の低い小太りの男が肩をすくめた。
 僕だってなりたくてなったわけじゃありません。
 そう言おうと思ったが、何だか腹が立ったのでやめた。頑張って仕事をしてきたのを
自分から否定してしまうようなものだ。
「ホームズ、チャイルド、やめろ」
「失礼しました、キング」
「さて」
 腕組みをしていた男――キングが身を乗り出した。こうして見てみると彼は結構
年配のようだ。周囲の人間は不自然に若い。外見だけで判断するなら、大介達の
ような二十代。
「総理。ここにおいでになったということは、政権を放棄されるとみなしてよろしいか?」
「何でですか」
「我々の要求を受け入れるためにこんなところまで足を運ばれたのでしょう、―― 
一人で」 
 余裕の笑みを浮かべているところをみると、なぜだかわからないが、自分の単独
行動は見抜かれているらしい。
 何もかも見透かされている。
「僕は単に自分が思ったことを確かめたかっただけです。たまたまもらった人形と、
パソコンに出てた画面の中にあったのが一緒だったので」
「そんな下らないことを?」
 メガネをかけた男が顔を前に突き出した。
「やっぱりたかが十七歳じゃ危機管理なんて無理なんだ。日本は我々のような優秀な
集団に動かされるべきなのだよ」
 これじゃまるでどこかの宗教家のような口調だ。
「……でも、あなた達だってまだ二十代じゃないんですか。年齢で判断するのは
良くないけど、年とともに身につく経験も必要、って僕を批判してる新聞に書いて
ありました」
 数人が吹き出した。
 僕、何か面白いこと言った?
「あのね、あなたバカじゃないの? そう思ってるんなら自分が辞めなさいよ」
 後ろで髪の毛を束ねた女が笑った。美奈子と違って化粧のけの字もない。
「我々は日本に革命を起こそうとした両親の意志・知識を継いでいる。それを十分
生かすことが出来る」
「そう思って計画を練ったのに、勝手な法案が通るからこんなややこしいことに
なるんだ」
 そんな文句言われても。
 そう言いかけて、ふと浮かんだ疑問を口に出してみた。
「もしかして、前の総理さんと基山さんが死んだのって……」
「革命には必要な犠牲だったのだ。仕方ないのだよ。被害は最小限に止めたと
思っているのだがね」
 キングが首を振った。周囲の者達も同意するように大きくうなずいてこちらを
見ている。
「そんなの、変だと思います……。自分のやりたいことをやるのは自由だけど、
人に迷惑をかけてもいいってことにはならないと思います。だって……」
「革命なんだよ、これは!」
 不意に小太りの男が大声を出した。びっくりして尻餅をつきそうになってしまう。
「多少の犠牲なくして改革はあり得ない。君もすぐに分かるさ」
 長身の男は自分の考えに微塵も間違いはない、と確信していた。そんな口調は
たまらなく不快だった。
 誰に迷惑かけてもひたすら自分の信じた道を突き進め。正義は後から付いてくる。
 いつだったか熱血青春ものと題したドラマをテレビで見たけれど、周囲の絶賛の中
姉達は一蹴した。迷惑かけた時点で、それは正義の一言でごまかされちゃダメ
なんだよ、と。圭もそう思った。
 この人達は我がままを正義とすり替えているだけなんだ。
 不意にキングがニヤリと笑った。
「それで我々を脅すつもりだった?」
 視線が後ろに隠した右手にそそがれているようだ。
 圭は考えた。いつも赤点を取っている数学のテスト時間よりも。
 どうすればこの人達の言う通りにならないで、皆を救えるか。
 キング達は自信ありげに自分をじっと見ている。多分自分の予測通りに事が運ぶと、
頭の中で考えているのだろう。
 出会った人達の顔が、声が浮かんでは消えた。
「無駄ですよ。脅して言うことを聞かせたところで、首相官邸はナイツ――ああ、
今田と名乗っているはずですね――が乗っ取っている。指示を出したところで受け
入れてくれるところがなきゃ、君はただの一般人でしかないんだよ」
 少し離れて立っている体格のいい男は、気持ちが悪いほどの猫なで声だった。
「え……!」
「だから、君は孤立したワケ。殺すなとは言ってあるけど、何人かは死んだかも
知れないよ。ナイツは刃向かう奴には容赦しない女だからねぇ」
 体を揺さぶられたほどの衝撃だった。
 じゃあ、さっき僕が電話で話したのは……!
 知らなかったとはいえ、わざわざ敵に行動を教えてしまったのだ。
 自分のせいで、大介や志保が危険な目に……。
 力の抜けるまま座り込みたかった。ひざがガクガクと揺れた。冷たいコンクリートの
床に体温を吸い取られていくようだった。
 しかし圭はそれを嫌がる自分に気づいた。まだやれることがある。出来ることを
しないのは本当の役立たずだと。
 ああ、僕は総理なんだ……。
 決心してゆっくりと顔を上げた。軍服達は冷ややかな笑いを顔に張り付かせて
こちらを凝視していた。
「……僕は、無力です」
 そうだろ、と長身の男がつぶやいた。
「でも一応今はこの国のトップです。だから僕が一番先に考えるべきことは、
都民の人達を守らなきゃならないってことです」
「……それで?」
 キングが促した。
「コンピュータを元に戻して下さい。でないと僕死んででも総理を辞めます!」
 彼らの顔から笑みが消えた。こめかみに当てた銃はこうしてみると結構重い。
緊張の為もあって、手が震えた。
「僕が今辞めたら、確か、ええと、内閣は解散しなきゃいけないはずです。そしたら
皆さんの要求に返事は出来ません」
 はぁ?、と小太りの男があごを突き出した。他の者達は黙ってこちらを見ている。
自分の言葉に心を動かされた様子がない。その目が冷たく刺さるようで、圭は
気分が悪くなった。
 まともな人間にはこんな目は出来ない。
「返事をしなかったら、あなた達は強制的に乗っ取るんでしたよね? それで誰が
納得できるんですか」
 キングがゆっくり立ち上がった。全身から立ちのぼる空気は先ほどの比では
ないほどに、暗く残酷だ。
「何が言いたい」
「返事をしないのに勝手に乗っ取ったら、一時的な政権掌握に成功しても結局
武力で取ったのと同じ。国民の反感を買うってことよ。知力でこの国を乗っ取ろうと
してるくせに、そんな理論も理解出来ないの?」
 聞き慣れた声。圭は振り返った。
 副総理――美奈子が立っていた。後ろには確か秘書の結城だと紹介された
人間がいる。
「あなた達にはもう、コンピュータを復帰させるしか選択肢はないわね」
 軽くウェーブのかかった髪をかきあげ、不敵に笑う。そしてこちらを見て、
「ちょっとボウヤ。道に迷うのは勝手だけどね、あなたのお陰でこーんな寒い中、
空に三時間もいたのよ! おまけにヘリの燃料が足りなくなって墜落するかと
思ったし! 気づかれるとまずいからって、お気に入りの香水一日つけられ
なかったこっちの身にもなってよ!」
「す、すみません……」
 良く分からないが謝っておこう。――あれ?
「副総理も人形もらったんですか?」
 美奈子は首をかしげた後、
「ネクタイの裏。発信機」
と言った。左手で触ると何かボタンのようなものがついていた。成る程、この人は
人形をもらってもあまり喜ばないだろう。
「とにかく、テロは失敗ね。残念でした」
「何故そう思うんですか」
 軍服姿の女性が左手を上げた。その人差し指は開け放たれた衝立のドアを
示している。「政治の中心が機能停止すればいいことです」
 遠くて良く分からないがそこにあるパソコンを指さしているらしい。
「遠隔操作によって国会議事堂と霞ヶ関ビルを爆破することが出来ます。総理の
我がままが、多くの死傷者を出すことになりますよ」
「あ……」
 圭が拳銃を降ろそうとした時――。
「いいんじゃなぁい。やればぁ」
 美奈子は興味無さそうに腰に手を当てた。「どうせこの子死ぬつもりらしいし。
アタシそうしたら総辞職になって職を解かれるしィ。辞めた後この国の政府が
どうなろうと興味ないわよ」
「貴様ッ、それでも政府の人間か!」
 前髪の長い男が一歩踏み出した。怒りで顔が真っ赤になっている。
「――あのね。言っとくけど、理想論追いかけて地に足がついてない人間が、
この国の舵を取ったところで何が出来るっての。せいぜい手詰まりになって
逃げ出すのがオチね」
 数人が腰のホルスターから銃を取り出して構えた。結城がすい、と美奈子の
前に立った。かばうつもりらしい。圭は、完全に立場をなくしていることに気づいた。
「あら撃つの? 結局は力で押さえるってワケ。それじゃあ同じ失敗を繰り返す
だけねぇ。あの時も確か、一般人を巻き込んでそれまで得ていた支持を失った
ハズよね? 香港領事夫人を爆死させたんでしたっけ?」
「……気づいていたのか」
「私が先じゃないけどね。……ってコトでいいかしら?」
 狙われているというのに美奈子がくるりと振り返った。つられて圭もそちらを見た。
 入り口にある木箱の陰からテレビカメラが出て来た。数人、スタッフジャンパーを
着込んだテレビ局の人間だ。カメラを抱えている男が、バッチリですと言った。
 軍服人間達の間に動揺のざわめきが広がった。何が起きているのか理解
出来ないのだろう。
「秘密裏の乗っ取りしっぱぁーい。生中継でお送りしておりまぁす」
 美奈子がカメラに向かって愛想をふりまいている。
「爆破を遂行しろ!」
 長身の男が女に向かって叫んだ。女が走りだす。
「うわっ!」
 後ろでスタッフの叫び声が聞こえる。圭も目をつぶった。止めたくても狙われていては
どうしようもできない。
 自分のせいでケガ人が出てしまう!
 その時。轟音とともに倉庫がグラグラと揺れ、黒い大きな塊が壁をぶち破って
突っ込んで来た。ちょうど、さきほどのパソコンをグシャリと潰して止まる。女が
尻餅をついた。
 その塊はダンプカーだった。
「圭!」
 ダンプの陰から志保が飛び出して来た。長い特攻服を着込んでいる。初めて見る、
志保のもう一つの顔。
「やんちゃはそこまでにしとけよ!」
 彼女の後に続いてぞろぞろと人影が表れた。特攻服を着ている。そのうちの
約半数は、志保と同じ薄紫色の服。レディース魔度華の人間なのだろう。あとの
人間も黒い服で統一されているとこから見て、一つのチームなのかもしれない。
「どうしてここが……」
 先頭に立ち、長細い棒を肩に乗せたメグが口笛を吹いた。黒い服の背中に
金色の月が浮かんでいる。
「そのセリフって、ドラマの中だけだと思ってたけど、言うヤツいるんだ」
「俺の人形がヒントになってな、たどり着いたんだよ!」
 ユウヤものそりと現れた。彼も黒い服だ。左腕の部分に“二代目親衛隊長”の
金文字が光る。
「バイクの方が車で走るより速いんだよ。もちろん特隊の奴らにケツ持ちはさせた
けどな。後は、途中で車組と合流して生中継の映像をカーテレビで見ながら、突入の
タイミング図ってたのさ。最近の電気機器は便利だね」
 志保がニヤリと笑う。特攻服の彼女を見るのは初めてだったが、開いた穴から
吹き込む風に吹かれて立つ姿はそれなりの迫力を持っている。
「あらすてき」
 美奈子がつぶやいた。「服のセンスは私のほうが上だけど」
 キング達はただ立ち尽くすばかりだ。さすがにこんなことまでは想像もつかな
かったのだろう。
 黒い特攻服の人間が圭を守るように前をふさいだ。
「あの……」
「総理にケガさすわけにいかねぇよ。ヤクザ相手の喧嘩だってしょっちゅうなんだ。
黙って守られてな」
 そう言われては何も言い返せない。
「さあ、どうするよ?」
 志保がすごむ。「撃つかい? あたしはケガするかも知れねーけど、あんたたちも
やられるねぇ」
 銃を構えた数人を、キングが「よせ!」と止めた。そのまま一歩前へ出ると、
「勇敢なお嬢さんだ。確かに力で奪い取ることはあきらめたほうが良さそうだ。しかし」
 あごをしゃくって破壊されていない衝立の方を示すと、
「我々がプログラムを解除しない限り、政府のコンピュータは停止したままだ。そこらの
奴には解読出来ん高度なウィルスだよ。壊すかね? どっちにしろ、政府は機能せん」
 志保がため息をついた。キングが再度逆転の笑みを浮かべる。
 そうなのだ。根本的な問題が解決されていない。
 圭達の見守る中志保は後ろの人間から携帯用テレビを受け取ると、テレビカメラの
方へ近づき、
「おい、どうなんだ?」
 答えはテレビの方から聞こえて来た。


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