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西郷どん

SP対談(18/04/01)

 見たけどなかなか面白かったですよ。
 役作りだけでなく、ここのシーンはこういう意味があるんだからこう見せよう、という表現の
仕方とかすごい勉強になる回でした。

 鈴木さん(西郷)と渡辺さん(斉彬)対談に入るシーンから始まるんだけど、座る位置が、
お互いのキャラを背中に背負う感じで座るというのは面白いと思った。
 鈴木さんは斉彬、渡辺さんは西郷、というので。
 しかしスーツだからすごい違和感あるなあ(笑)。

 まず、お互いに相手役が誰か分かった時にどう思ったか、という質問について。
 渡辺さんは、西郷をやるなら鈴木しかいないだろうと思っていた、決まった時はほらな!と
周りに行ったという話を。
 イメージの中にあったんでしょうね。

 鈴木さんは、斉彬が渡辺さんだと聞いた時に動き止まったそうで。
 まあそら大物相手に渡り合えるか、というのがあるだろうなあ。
 
 このあと演技について細かく二人が打ち合わせてるんだけど、こうできる?という風に渡辺さんが
鈴木さんに提案する形で、いろいろ変えたりしてるみたいですね。
 渡辺さん自身、今の鈴木さんよりも若い年齢で大河ドラマ「独眼竜政宗」に抜擢された過去が
あり、その時に得たものを鈴木さんが生かせれば、とい思いがあるそうです。
 大河の経験が今の仕事のベースにもなってるから、大事な経験だったんでしょうね。
 
 西郷どん第5回の相撲の回。
 あの、西郷が斉彬をソイヤッしちゃったやつですね(笑)。
 二人は最初から、このシーンはぶっつけ本番でとろうと決めていたそうです。
 話の上でも、今までちょくちょく顔を合わせてはいたものの、「斉彬」と「西郷」として顔を合わせるのは
初めてであること、対面での緊張感を損なわないようにしたい、ということなんだと思います。
 なんかわかるなあ。
「初めて顔を合わせる」という緊張感って、演技では出せないところがあると思うので。
 2人はこの日のために、今までの撮影でもわざと、あまり言葉を交わさず、ご飯食べにいったりする
ようなこともなく、距離を置いていたんだそうです。
 鈴木は、相撲の経験がないから、ひと月みっちり相撲部屋に通って稽古もしてたらしい。
 役者って大変ですねえ。

 渡辺さんも、この時までは自分の手の内は見せないぞ、どこまで出来るか理屈じゃないとこを
試したかった、と語っています。

 というわけで本番始まったけど。
 画面通してないからか、「のこった!のこったのこった!」という声が意外にうるさい(笑)。
 
 この時のシーンを振り返って鈴木さんは「横綱がとる相撲じゃないですよ」と言い。
 渡辺さんは「俺横綱じゃないから」と。
 まあそらそうだ。
 鈴木さんは、本気で倒されそうになってかなり焦ったらしい。
 ただ二人とも共通していたのは、ここでどういう関係性かを演技で示すということ。
 本当に大変だと思う。

 もともと相撲の前に土俵に上がった時に、西郷は殿に出会えた感激でうるうるする、みたいな
展開だったらしいんだけど、渡辺さんの意向で演出変わったらしいです。
 まあ本番に使われた演技の方がいいと思いますね。
 パッと顔を合わせてパッと取組み、その方が話の流れ的にも緊張感を保てるし、しらけなくて
いいと思う。
 ちなみに渡辺さんは、本気で勝つ気でいたらしいです。
 それでいいんじゃないかなあ(笑)。
 もしも殿が勝ってしまったとしてもどうにでも台本変えられるでしょ。

 で、鈴木さんのメークさんが翌日困ったらしいですよ。
 顔のしたあたりに、渡辺さんの張り手というか爪の跡がすごい残ってたらしい。
 そんだけ本気だったんだなあ。

 この後鈴木さんがセリフの細部にまでこだわってるシーンが出てきます。
 この時代の若者が、国を変えようと熱くなっている中、西郷は一人、もっと大局を見ていた、
相手の立場とかも考えていたのではないか、と思って演じてるそうです。
 坂本龍馬とかもそうなんだけど、目先だけじゃなくてもっと先、国をひっくり返して明治維新成し遂げた
後どうするか、というのを考えて動いている人というのは常にいますね。
 ただそれが、周りから理解されないと、「こいつは乗り気でない」とも思われがち。
 そして排除に動いてしまう。その人の考えが大事だったとわかるのは後になってから。
 難しいと思います。

 その一方で渡辺さんは、更にベテラン相手に対して鬼気迫る思いで演技をしていた。
 あの、第4話の斉彬父に引退迫るやつですね。
 というかアドリブをしたっていうのは、あの鼻をかむシーンですかね。
 確かに流れ的にあまりにも唐突だったからビックリしたんだけど。
 緩急をつけた、という感じはしましたね。

 で、この後ロシアンルーレットにおいて渡辺さんは、不思議な感情が湧いてきたといいます。
 父親(鹿賀さん)に拳銃を渡した時、自分は何と言う事を父に求めてしまったのだ、もしこれが発砲して
父が死んでいたら一生後悔すると思った、と。
 打ち合わせとかリハの時そんな感情はまったく浮かんでこなんかったそうです。
 だから最後泣いていたんですかね。
 そういう感情がこぼれる瞬間がドラマの醍醐味なのだと。

 鈴木さんも同じような体験をしていました。
 第7話、母が西郷の背で息を引き取るシーン。
 鈴木さんは、母をおぶいながら幸せであった、と言います。
 いろんな感情が湧いてきたって。
 渡辺は、その感情はすごく良いと褒めてます。(対談にて)
 ものすごい複雑な感情の顔が出来てたって。
 鈴木さんは、最初は母親を背負ってる気持ちだったけど、だんだん子供を背負ってる感覚にも
なってきた、悲しいけど幸せだって。
 渡辺さんも、母親としては息子の背中で死んでいくというのは理想なんだろうけど、息子には
切ないよね、そういうのが複雑に織りなしたシーンだと言います。
 確かに、ただ泣くだけじゃなくていろんなものが表現されていたなと思う。
 単に悲しくて泣く、だけじゃなかった気がする。

 この後は渡辺さんの話が少し語られます。
 自分の演技に自信が持てないまま、大河ドラマ主役に抜擢された渡辺さん。
 自分の演技を引き上げてくれた人として記憶に残っているのが、秀吉役の勝新さんだったと。
 確かにすごいですね。
 座っているだけ、立っただけ、でものすごい迫力あるし、言葉なく空気で政宗を威圧してる。
 この、秀吉との対面(歴史では、政宗が再三の呼び出しに応じず、ものすごい遅れてしれっとやって
くるとこ)も、ぶっつけ本番だったそうです。
 すごいですね。
 こういう風に勝新さんから、セリフと気迫だけでなく、全身で勝負するというのを教わったと渡辺さんは
語ります。
 また、演じることだけでなく、衣装の着こなし、小道具の扱い、所作、話し方、役者としての居方など
すべて教わったと。
 確かにセリフや説明じゃなく、ちょっとした動作がすべてを物語るというのはありますからね。
 歩き方一つにしても、自信を持っている人、気の小さい人、女性、子供、老人、すべて違うし。
 渡辺さんは、こうして自分がもらったものを鈴木さんに渡して「循環させていく」ということを話す。
 これ大事ですね。

 情報というのは1人が持っているだけでは本当にただの情報です。
 しかしそれを人に伝える、話す、教えるということによって知識、経験という財産となって受け継がれて
いく。そういうことを渡辺さんは言いたいんだと思います。

 第9回目、斉彬が西郷に対して、自分の右腕になる覚悟はあるか、と問うシーンがありました。
 ここで渡辺さんのセリフは、西郷に問い、西郷が「自分の命を懸けて受ける」と答えたとこで
終わりのはずでした。
 しかし渡辺さんは「何でもかんでも命をかけるな。命は一つだ」と付け加えた。
 鈴木さんは、感極まったように「ははっ」と受けました。

 鈴木さんもこのシーンは戸惑ったらしいです。
 渡辺さんは、西郷があまりにもなんでもかんでも命かける命かけると言うから言ったと。
 それは、渡辺さんの中に斉彬が出来ていたからこそ出た言葉なんだろうなあ。
 これ、ちょっと失礼かも知れませんが、面白いだろうと思って言うアドリブとは違うと思うんですよ。
 やたらアドリブが多い役者さんとか声優さんとかがいて、台本にないアドリブを言ったりする。
 それはそれで味になっていいと思うんです。
 でも、アドリブが多すぎると話を殺してしまうことになる。アドリブがうまい人というのは、ここらの
呼吸をとても心得ていると思います。
 渡辺さんのこのアドリブというのは、そういうものとはまた違って、斉彬だからこそ出たアドリブ
なんじゃないかな、って。
 西郷あまり任務に突っ走りすぎんなよ、って思いがあったんじゃないかなあ。

 鈴木さん、あのアドリブには「ははぁっ!」って受けるしかなかっただろうなあと思いますね。
 熟練の俳優さんだったらどうなっていたか、とも思うけども。

 そして第11回。
 斉彬の暗殺未遂の回。
 西郷が斉彬に食事に手を付けるなといい、魚の切り身を懐紙に入れ、立ち去るシーンについて。
 受け継がれたのは所作の大切さでした。
 テイク1では西郷がパッと切り身包んでパッと立ち去るのですが、渡辺さんはこれを見て、もう少し
斉彬をきちっと見ろと指導した。
 何としても犯人を見つけ出してやるという忸怩たる思いで西郷はここをあとにするのだから、懐紙で
切り身を包んだあと、斉彬をしっかと見て頭を下げて出て行きなさい、と。

 それで撮影された本番は、西郷の決意がよく伝わるシーンになりました。
 最初にテイク1流してくれるのわかりやすくてありがたいです。

 鈴木さんは言います。
 今の撮影現場であんまりアドバイスしてくれる先輩はいないと。
 それは、「あいつ(後輩)にはあいつの演技があるから余計なことは言わない」という思いでもあるん
だろうけど、でも経験として思ったことは伝えた方がいいんでしょうね。

 この後、斉彬が西郷を怒るシーンがあります。
 暗殺未遂の回に、うろちょろ動き回ってる西郷に、時間がないって怒るやつですね。
 最初は西郷を殴る手筈だったそうです。
 しかし渡辺さんは鈴木さんを蹴り飛ばしてきた。
 斉彬だったら感情爆発した時にこうなる、ということなんかね。
 鈴木さんがうまく飛んでくれたから、と渡辺さん言ってるけど、鈴木さんは、ワケもわからず飛ばされた
そうです(笑)。
 渡辺さんは毎回終わった後に「大丈夫?」と聞いてくれるから安心感がある部分もあるらしい。
 ただ、「もうちょい弱く」とかはさすがに言えないから、思い切り来てほしいと言ってるって。
 今だから言えるけどあの時はかなりきた、という鈴木さん。
 笑えます。
 3メートルくらい吹っ飛んだらしい。
 うーむ。

 この後、美術さんとかセットなどの説明が出てきます。
 西郷が履いているのは、かかとのない草鞋。
 動きやすいと鈴木さん言ってますが、実はこの草鞋は信長も好んではいていたそうです。
 あの人は思い立ったらすぐ実行、というタイプだったので、外ではこれを履いて自らも動き回り
ながら、部下にあれこれ指示していたんだとか。
 
 あと、西郷がいろんな人と出会う飯宿セットが出てきました。
 すごいですねえ。

 この後、西郷と斉彬、山場となるシーンのリハーサルが行われていました。
 井伊に、薩摩の力を見せつけようと、二人が話すとこなんだそうです。
 楽しみですなあ。
 ここで初めて西郷が斉彬に自分の考えを進言する、というシーンで二人は悩んでいた。
 二人の距離が変化するのをどう表そうか、ということらしいです。
 確かに難しい。
 単に目線あわせて話せばいいってわけじゃないからなあ。
 今まで斉彬が西郷の前に「座ってやって」目線が合う、というのはありましたし。
 で、西郷が下っ端の部下という立場を超えて斉彬に進言する、という決意をどう表すか、ということで、
膝立ちでぐいぐい寄っていって呼びかけるみたいなのやってます。
 本番、どんな風になったか、というのは見てのお楽しみですかね。
 ちょっとだけ流れてましたけど。

 斉彬は西郷に「今からお前は俺になれ」というみたいです。
「俺達」
「夢の中で」
「入れ替わってるー!?」←やめろ。

 これで斉彬はクランクアップということになるらしいです。
 鈴木さんは渡辺さんのことを、こんなにアドバイスをくれる先輩に出会ったことはなく、感謝している、と
言ってました。
 花束渡すのに「殿」とひざまずいて渡すの良かったなあ。
 鈴木さんにとって、非常に刺激的だった4ヶ月の共演経験が、これからどう生きてくるのかが楽しみ
ですね。
 
 これから舞台は南国の島に移るようです。
 島流しにあうやつだな、西郷が。

 渡辺さんは最後鈴木さんに対してこう言ったようです。
「迷うことなく、恐れずに」
 いい言葉だと思います。


 次回第13話。
 「ジジィになってもあだ名で呼び合える友達を作れ」



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