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陰陽師U |
10/22鑑賞
「八雲立つ 出雲八重垣 妻篭みに 八重垣作る その八重垣を」
これは日本で初めて詠まれたとされている和歌で、詠み人はスサノオ。ヤマタノオロチ
を退治しクシナダヒメと結婚して詠んだものとされています。
さてそのスサノオノミコトとは出雲神話でもご存知のとおり、アマテラスオオミカミの
弟であり、手のつけられない乱暴者。天界から地上に落とされ、さまよううちに出雲の
国にたどり着き、オロチ退治に至ったと伝わっています。
ただ、今回の映画の根幹にもなり、大和朝廷が伝えたものとは違う、いわば「裏」とも
言うべき伝説ではアマテラスが出雲に攻め込んで、スサノオが怒ってどーたらとかかれて
いますが(パンフレットにて説明されていますので詳細は割愛)、これは神話と歴史がゴッチャ
になっています。
確かに出雲の国は、「もののけ姫」でもおなじみ、たたら製鉄などの技術を持っており
その技術を朝廷が欲しがったものの、なびかないために朝廷に逆らう敵として「土蜘蛛」など
という名前をつけられたりもしているようですが、その退治として差し向けられたのはヤマト
タケルノミコト(景行天皇の子)。アマテラスだのスサノオだのは関係ありません。
この話(裏神話)は映画のために作られたものですが、神話は結構ややこしい上に裏づけ
のないものなんで、あんまりアマテラスやスサノオを朝廷どーたらの話に持ってくるのは
どうかと思います…。出雲神話が正しくないというのはありだとしても。
ちなみにアメノムラクモノツルギですが、この時代は確かにあったものの、源平合戦の
時に安徳天皇とともに海中に没したので、今伝わっているものとは別物です。なんてこと
しやがる。
さてこれらを踏まえなくてもいいんですが、映画内容にいってみましょう。
京では、日隠れが起きたと大騒ぎの真っ最中。まー昔は自転車のチューブがあれば
空気を吸って生き延びられるとかいう説がまかり通って、自転車屋とタイヤ屋大もうけ、
猫灰だらけってなもんでしたが、まあ真実知らなきゃ不吉なあかしというのももっともでして。
その上鬼が出て人を襲うというので必死こいて祭りで大騒ぎ。
こういうところからアマテラスの岩戸隠れ神話は生まれたんじゃないかと思うんですけどね。
でもってその祭りに参加していた男装した女性、日美子(右大臣の娘)に、博雅一目ぼれ。
まあなんとなくどうなるかは予想がつくのですが。
で。この鬼の騒ぎの件で右大臣が晴明に相談しにやってくるわけです。なんでも日美子
が毎晩毎晩夜出歩いて、本人に問いただしてもまったく記憶がないとか。それが始まった
のが日隠れのあった時からなので気になっているそうです。
まあ映画見ていた殆どの人が心の中で「そりゃお前タダの夢遊病だよ」と突っ込みを
入れまくったことと思いますが、当時はそんな病気も判明していなかったので、そりゃ心配
にもなるでしょう。私としては毎晩娘を止めるわけでもなく見守っているあなた方の方が
心配ですが。
晴明はそんな日美子を見て、物の怪はついていないようだと判明します。まあ物の怪は
ついてないですが、とんでもないものだったわけですな。
さてその一方。京の外では、貧困にあえぐ人達が、幻角という怪しくてむさいおっさんに
助けを求めていました。この幻角という男、呪文を唱えてたちどころに難病奇病などを治して
しまうという、マギー司郎(マギー関係ないやん)もビックリの正体不明な人です。そんな力が
あるなら住んでるところをもっときれいげにしてやって他の人達を救ってやれよ。
なんや京の中はきらびやかで外は死に瀕した人がごろごろ…というとまるでどこかの
太った何のカリスマ性もなさそうなエロオヤジがやっている国のように思えてもきますが、
うっかりそんなことを書くとページ削除どころか存在を削除されかねないのでコレくらいにして
おきます。
しかし実際この時代はこういうのが当たり前で、死体とかも平気で転がっていました。
そのために疫病が流行り、空気感染する病気などもしょっちゅう流行っていました。江戸時代
くらいまではこうだったかな。
死体は土に還るのでエコロジーといえばそうですがね…うーむ。
えー何の話でしたっけ、あ、そうそう、幻角でしたね。往々にして悪人というものは、人々の
心に入り込むために最初は聖人面しているものです。なんか聖書でも似たような言葉が
あったんですが忘れました。各自探して下さい。(待て)
さていつものように屋敷を訪ねる博雅。部下が自動ドアに驚いているのを見て、最初は
自分も腰を抜かさんばかりに驚いていたのに得意満面です。しかしそこはそれ、晴明の
方が上ですからいいように遊ばれています。早く気づけ。
博雅は鬼の被害について相談しにきていました。奇妙なことに鬼は人を襲うが体の一部分
のみ食っていくとのこと。まあなんてグルメな鬼なんでしょう。というか選り好みすぎ。
この鬼は親に「何でも残さず食べなさい」といわれなかったんでしょうか。きっと毎晩
もったいないオバケに囲まれていると思います。「ほら、食えよー」「飛んでみろよー」
「小銭がポケットに入ってんだろー」とか。あ、これは違いましたね。
ある夜博雅は、廃屋の前を通りかかります。素晴らしい琵琶の調べに、思わず笛を
取り出して共演する博雅。つーか初めて聞いたその音にあわせられるんだから大した
ものというか無謀というか。あれでいきなりロック調とかにかわったらどうするつもりだった
んでしょうか。←ないから、そういうのは。
そこで博雅は、引いていた子供が須佐という名であること、その曲が須佐のふるさとに
伝わるものであることを知ります。
まあ今でいうと、ストリートミュージシャンの協奏ですね。(うわぁ一気にチープに…)
しかしえらい音楽が合ってなさそうに感じたのは私だけでしょうか。もう少しこう、
笛の吹きようが…。
そして晴明はアメノムラクモノツルギに異変を感じ取ります。しかし変異は現れず、
帝の前でそのを示せなかった晴明は鬼退治をしろといわれます。ええっ、明らかに空
飛んだじゃん。あれを「何も起きてない」ということは日頃から晴明は空を飛んでいると
いうことでしょうか?いくらこの時代の人より思考がぶっ飛んでいる晴明といえども、
あまり人前で空を飛んで上空から「よっ、こんちご機嫌いかが」なんてことはしなかったと
思うんですが。
まあ何もないと言ってたのがお前ヘリウムガス間違えて吸ったんちゃうかというような
おっさんと、あと鈴木ヒロミツだったんで、晴明をよく思ってないのかも知れませんね。
そのアメノ(以下略)ですが、晴明は昔の巻物を開いて調べ始めます。うーむ流石に
このあたりは式神にやらせて必要なところだけピックアップというのは出来ないんですね。
ちなみに博雅は、裏出雲伝記のようなものを見てしまいビックリ。大和朝廷が出雲の
国からアメノ(以下略)などを強奪し、滅ぼしたという言い伝えを見て愕然とします。
そんなことがあってはならない、俺は何も見なかったという博雅に晴明は、「それでいい。
昔のことなど、何があったかは誰にもわからないのだから」と言います。
あれですよ、私が昨日の晩御飯何を食べたか、誰にも分からないのと同じことですよ。
(比べるな)
その頃あのヘリウム男と鈴木ヒロミツは幻角に鬼退治を持ちかけていました。つまり、
この男が鬼退治をうまいことやればこの男は晴明にとって変われるし、親父ーズは
威張れるし、目障りな晴明はいなくなるという腹積もりらしいです。親父ーズに謹んで
この言葉をささげます。
「とらぬタヌキの皮算用」
またも鬼の犠牲者が出ました。そこで晴明は、何かヘビのようなものが絡み合った
印が浮かぶのに気づきます。そこへやってきた親父ーズと幻角。幻角にも鬼の正体は
分かっているのか、二人は意味深な笑いを浮かべます。
本当の鬼の姿が分かっているのかと尋ねる幻角に、あれは真の鬼ではない、と告げる
晴明。果たしてその真意は?
一方、矢をいられた鬼の傷を治し介抱する日美子。この時点で鬼の正体をさくっと明かして
しまうのもなんか早すぎるような気がするんですが…。
でっ。鬼の正体は須佐でした。
そこへやってきた博雅は日美子に、須佐との琵琶と笛のコラボレーションを奏でて
聞かせます。というかこのシーンの博雅、きれいなねーちゃんを前に二枚目を演じる
父ひろし(ばーいクレヨンしんちゃん)のようです。
その音楽を日美子は涙を流しながら聞き入っています。懐かしい何かを思い出すようで
あると日美子は言いますが、演技力不足のせいで、日曜日の朝っぱらから、ノコギリを
引くような音のバイオリンを聞かされる昨日徹夜だった漫画家の顔とどう違うのか
見分けに苦しむところです。
しかもいきなりロック調。お前らこの前引いてたのとちゃうやろ、明らかに。
でもって耐え切れなくなった須佐はいきなり飛び出していってしまいます。どうした、
電波でも受信したか。
毎晩の日美子の奇行に、とうとう右大臣は今一度晴明を訪ねます。そこで彼は、
本当のことを話し始めました。自分たちが出雲一族を襲い滅ぼしたこと。その際に
日美子を見つけ、育てているということ。つまりは日美子は出雲族の人だったのです。
ただ、この頃は滅ぼした一族の子供を引き取って育てるというのは珍しくもないですし、
別に悪くもないでしょう。そういう歴史だったのですから。
つーか娘が鬼やと思うんだったら尾行すればいいのにとか思うんですが。毎晩毎晩
見送るからいつまで経っても確かめられないわけで。
晴明は博雅に、鬼が食っている場所と、出雲八卦というものから、鬼の狙いを見つけ
たと説明します。つまり鬼が、8人の「天岩戸に関わる神の子孫」のそれぞれの部位を
食った時アメノ(以下略)に封印されたオロチの力が開放されるというのです。いやそれなら
蘇るのはオロチであって某(後でネタバレ)ではないと思うのですが…。
ともかく、狙いに気づいた晴明は布陣を張って鬼を待ちます。がしかしそこは博雅。
観客の期待を裏切らないどころか晴明を危機に陥れてくれます。いやああんなコケは
コントでも久しく見たことがありませんでした。
というわけで鬼の正体が須佐と分かったものの結局何も解決せず。
そして日美子は晴明に、自らの腕にあるあざのことで相談しに行きます。そのあざを
勝手に開放してとんでもないものを解き放ってしまう晴明。あんた…もうちょっと何か
やりようはないんかい。
ちなみにお邪魔虫と判断された博雅君は晴明によって時間を止められて、外の柱に
立てかけられていました。晴明の、博雅に対する本音を見た気がします(笑)。
そんでもって博雅は忘れ去られたまま晴明は日美子を連れて彼女の生まれ故郷に
向かいます。
って何でそんなにすぐ出雲の里に着くんですか。1日でいける距離かぁぁぁぁ!
とか思っていたら都から半日でいける距離にある隠れ里らしいです。つうか。
隠れ里なのになんで滅ぼすのか…。パンフレットによると、先住民族が暮らすのを
許されていたところとありますが、なら滅ぼす必要はないですし、暮らしっぷりを見て
いると出雲の国を滅ぼしたのであって隠れ里を滅ぼしたわけじゃなさげだし…うーん。
なんかつじつまが合いませぬな。
まあそれが陰陽師だから。
そこで出会った幽霊は日美子の本当の母、月黄泉でして(こんな名前をつける古代人の
ネーミングセンスを疑いますが)、そこで真実が語られます。
要するにですな。
出雲族を大和朝廷が滅ぼす
↓
何故か都合よく生き残っていた長が、子供を神にささげてスサノオとしようとする。が
子供の姉にもなんか力が与えられる
↓
子供を案じた月黄泉が子を殺そうとして長に殺される
↓
その子供は今鬼となって人を食らい、でもってスサノオとして復活しようとしている。
↓
日美子逃げてーーーー志村うしろーーーーー
ということでした。
いやいくら出雲族といえども神と交信するというのはどうなんですかねぇ…ちうか、
儀式に子供を使って力を得ようとするのはどちらかというと黒魔術の領域だと思うんですが。
結局追いついてきた幻角と須佐。日美子は止せばいいのに、話せば分かる、話せば
分かるは犬養毅ー!!!とばかりに須佐のもとへ。残った晴明は幻角の結界に閉じ込め
られてしまいます。
まあ説得して分かってくれるのは銀行強盗に入ったけどマスク忘れたから自首するとか
言い出したおっちゃんくらいのもんでしょう。結局日美子は須佐に食われ、須佐は封印を
といてスサノオに。話して分からなかったのは犬養毅だけではなかったようです。
やっと元に戻った博雅も急いで駆けつけてきます。せやからお前半日かかるところで
どんだけ早くたどり着いてんねん。
晴明は京を救うために、アマテラスを復活させるとか言い出しまして、天岩戸目指して
階段を出現させて上り始めます。あれです、天国への階段とかいうやつです。
博雅は俺も行くとか行ってますが、傍目からみれば男同士の心中にしか…ゲフゲフッ。
まあともかく、晴明は女装して(岩戸を開くためにウズメノカミの役をやっている)るんですが、
どっかのドラマで女装している男の役をやった、中途半端に化粧した篠井さんにしか見えません
でした。というかこれを夜見ると確実にうなされます。
もう少しこう、目元に紅をさすなりなにかしてください。これでは、三日三晩洗脳映画を
見させられるカルト教団入信者と同じ拷問です。
突っ込みすぎて最早誰に失礼なのか分からなくなってきましたが、ともかく近日中に私の
身に晴明公からの天罰が下るのは間違いないでしょう。
しかし気の遠くなるような高さですなぁ、天への階段は。昔出雲大社も今よりずっとずっと
高い位置にあり(48mくらい)拝殿するのに上っていたようです。いやあ高所恐怖症の私には
多分参拝なんて冗談じゃないですね。風が吹いて飛ばされたらどうする。←というか絶対
床を踏み抜きそう。重いから。
えーとなんでしたっけ、あ、天に昇っていたんでしたね。しかしこの道のりをずっと笛を
ふいている博雅もそうですが踊りまくっている晴明もすごいですな。
神がかりということで目つきが怪しい人になっていますが(これ以上の暴言は式神に
とりつかれそうなのでやめておきます)、おかげでなんとか神の世界にたどり着きました。
岩がばばーんとありまして、これをぼぼーんと開くとなんやアマテラスが出てくるらしい
です。ぼぼーんと。
んで相変わらず晴明さんは踊ってるみたいですが、空中に浮かんで踊るより、下で
踊ったらよろしいのに。
そこへ幻角とスサノオもやってきて大騒ぎ。階段消すくらいしとけよ。
岩戸は開いたんですが晴明がやられました。
なんか言っちゃ悪いですがここまで引っ張ったわりにはあっさりとアマテラスが出てきて
スサノオは一緒に還っていって月黄泉は出てきて、幻角はがっかりして終わりました。
うわぁ…。
で、現世に戻ってきて幻角は仮死状態になっている晴明に力を与えてやり、去っていきます。
でもここでの博雅の「死んではならん」というセリフはいいですね。博雅の優しさがよく伝わって
くる良いシーンです。これだから晴明は博雅という男に引かれるのでしょう。
第1作目の導尊のように、私利私欲で京を陥れようとしたのではない。自分たちの国の
復讐のためにやったということがわかったからこそのセリフでしょう。
幻角の琵琶の音、博雅の笛の音の中目を覚ました晴明。
ホッとした博雅をからかいつつ、夜は更けていくのでした。
というわけで今回は2時間でしたが、残念ながら後半がかなりダレましたね。時間を割きすぎた
って感じかな。前回は晴明をとりまく人間関係、博雅との絆を深めていくさまなどが描かれて
いて、戦闘シーンがあっさり終わっちゃったというのもあってか、中間からスサノオ覚醒、岩戸
へ向かう二人というのを描いた割には終わり方がそれですから…。
失礼ですが、陰陽師というストーリー性を求めてこられるなら、レンタルビデオが出てからでも
構わないでしょう。
私は野村さんの演技と、津嘉山さんのナレーターなどが楽しみだったのでまあ良かったです
けどもやっぱり不満。
もう少し華麗なる戦闘シーンが欲しかったな。
感動がなかったというのも残念なところでしょうか。前回の博雅が死ぬシーンみたいに、
シーンと静まり返るところがなくて残念。
ただ、出雲神話とかは面白かったと思うので、まあエンターテイメントとして見に行くのは
いいですね。
(情報協力:うちの相方…)