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ラストサムライ |
12/14鑑賞
『汝の運命の星は汝の胸中にあり。』 シラー
あるところに1人の飲んだくれがいました。その名をネイサン・オールグレン。
彼は数々の戦場を潜り抜け、戦い、そしてそれに失望を感じていました。
自分にとって戦うということは何なのか、自分達が殺してきた人の上に歴史が
作られてきていること、そしてその歴史は本当に正しいものであったのか。
劇場で戦地から戻った英雄を演じて金をもらい、1日を過ごしていた怠惰な彼の
もとに、戦いに参加して欲しいという要請がありました。
インディアンを駆逐し、西部を開拓したことにうんざりしていたネイサンでしたが、
金につられたか何を思ったか日本での、サムライを駆逐するという戦いに参加する
ことにします。
ネイサンを雇う日本側は、散切り頭を叩いてみれば文明開化の音がするってなもんで
サムライという古い時代がお気に召さない様子。確かにこの明治時代、日本は明治維新
を経て新しい時代へと飛躍します。
しかし維新志士たちが目指したかったのは西洋かぶれの日本ではなく、自由な日本
だったはず。大久保利通や坂本竜馬、桂小五郎が見たら何と言ったでしょうね。この日本
だけでなく、アメリカや諸国の機嫌をうかがって憲法解釈を捻じ曲げてまで自衛隊を派遣
しようとしている今の日本は。恐らく「義を見てせざるは勇なきなり」とは言わなかったでしょう。
この頃日本が欧米化して、刀に変わり鉄砲が武器として用いられ始めていました。
ゆーても火縄銃がちょっと進化した、みたいな。しかし2回目を撃つには時間がかかるので
もしもサムライと戦うとしたら圧倒的不利なのは間違いないでしょう。鉄砲は接近戦には
向きません。
案の定、切り込んできたサムライになすすべもなくあたふたする鉄砲隊。上司の命令
なんざ聞いちゃいません。そらーただの農民に鉄砲持たせたのと、日頃から訓練されていて
死をも恐れない武士とどちらが強いかゆーたら、子供とかに聞いても多分「仮面ライダー」と
答えますがな(待て)。
そんな中ネイサンは1人ぽつぅーんと取り残されたあげくサムライに囲まれてしまいます。
でもってそこらにあった旗を振り回して応戦しますが、まあそりゃいつかは疲れが来るって
もんで、赤い鎧を来たサムライにやられそうになります。ところがどっこい起死回生の一撃。
ネイサンは会心の一撃を放った!
サムライは昏倒した!
ネイサンは混乱している!
ネイサンは旗を振り回した!
勝元は様子を見ている!
ネイサンは力尽きて倒れた!
勝元は様子を見ている!
ネイサンは立ち上がってこちらを見ている。仲間になりたそうだ。
仲間に入れてあげますか?
→はい
いいえ
(一部表示に誤りがあります)
武士の里に連れてこられたネイサン。受けた傷も深く、たかの手当てを受けて眠って
います。
ネイサンを連れてきた勝元に、その息子信忠も、妹たかもあまりいい顔をしません。しかも
このこんちくしょう、アル中だったらしく一晩中「さけー!!!!」とか叫んでました。というか
昔殺害したインディアン達が浮かんできて、その罪の意識が彼を酒に追いやっていたようです。
しかし叫び声を聞かされる方はたまったものではありません。私ならさるぐつわかませて倉に
とっとと放り込みますが。
さてこの勝元、フルネームでは「勝元盛次」といい、日本の伝統である「武士道」を大切
にして生きる男です。しかし最近の急速な欧米化により、日本人の心でもある「武士道」が
消えつつあることに危機感を持っていました。
武士道というものは考え方、生き方であるので簡単に説明することは出来ません。ただ、
「武士道とは死ぬことと見つけたり」という言葉は誰でも聞いたことがあるでしょう。これは
単に死ぬということがそれなのではなく、すべての覚悟、責任を負い戦いの中で死んでいく
ということではないかと思っています。後半に「二つ二つの場にて早く死ぬはうに片づくばかり
なり」という言葉があります。つまり、潔い死が出来る生き方、選び方をしなさいということ
でもあります。
この精神が武士の生きる目標でありプライドであり…。西洋にこびへつらっている日本人が
勝元には武士道から外れていると映ったのでしょう。
武士の里に連れてこられたネイサンは氏尾にコテンパンにやられちゃったりします。まあ
真田さんは剣の達人ですからねぇー。はっはっはっはっは。しかしネイサンは何度も立ち上がり
ました。氏尾が驚くほどに。それに対して手を抜かず叩きのめしたのもまた、氏尾の武士道
でもあります。
この剣の強さの前には西洋の文化など役に立つはずがありません。
ネイサンの中で何かが変わり始めたようです。
ネイサンはそのままたかの家でごやっかいになっていますが、子供たちは早々に打ち解けた
のに対し、たかは何やら気が進まぬ様子。あれですよ、やっぱ外国人にいきなり名前を呼び捨て
にされたのが…。
というのはもちろん冗談で、勝元から自分が刺し違えた赤い鎧の武士がたかの夫であった
ことを知ったネイサンは、たどたどしい日本語でたかに謝罪しました。
戦いで人を殺すということ。それは戦争ではやむをえないことです。でもネイサンはそれを
割り切れるほど非情な人間ではなかったということです。
というかたか、容赦なく日本語で返しています。
武士の里で暮らし、剣術を習い始めたネイサン。元々素質はあったのか、氏尾と引き分ける
ほどになりました。いやーさすが映画!上達が早いですね。あと流石は真田氏。この息のあった
殺陣は見事です。
ちなみにネイサン、こっそりハカマをはいてサムライごっこを楽しんでいたら、子供に発見されて
ちょっと動揺したりとお前は精神年齢いくつなんだとほほえましい光景が見られました。
また、親指が離れるという芸を披露したりするところなどは、マギー司郎が見たら「あのね、
ボクのオハコをとらないで欲しいのね」と言ったでありましょう。というかお前は何やってんだ。
夜。なんかの舞台をやって楽しんでいます。狂言か能のもじったものか知りませんが、勝元
自ら出演者になって楽しんでいます。こんな時でもなければどさくさまぎれにやれないとばかりに
女の出演者も勝元をピシャリとやったりして。というか勝元はお面なしでもやれるほどひょっとこ
顔がうまいということが判明しました。
まあそんなバカやってるわけですから、ネイサンが声をかけるまで忍者の出現に気づかなかったり
するわけですが、大体西洋に染まってるというのに刺客は忍者というのはものすご卑怯臭い
と思うのですが。後半になるとどう見ても大陸の拳法の使い手とか出てきたりして、お前ら一体
どこから刺客調達してきてんねん、みたいな。
このシーンはかなり息詰まる戦いで、終わってからため息つくくらいすごかったです。必見。
で、勝元を助けて戦ったネイサンに対し、勝元は「明日ちょっくら東京行くからお前もついてこい」
と言うわけです。ネイサンを返すんですな。でもって俳句を作って下の句が浮かばないなどと
ほざいてます。大物ゆえの余裕か、のん気なものです。
こうしてネイサンは釈放され戻ってきました。ところがどっこい、ネイサンをよく思わない男Aは
ネイサンをアメリカに追い返そうとします。
勝元は勝元で、天皇に会おうとしますが、西洋側に一番早く寝返っている武器商人大村が、
帯刀していることを咎めます。天皇はそれに対して何のフォローもしませんでした。ハッキリ言って
情けないにもほどがあります。もしも明治天皇がこんな男であったならば、確かに日本はアメリカ
の植民地になってしまっていたかも知れないですね。
こうして勝元は東京の自宅にて謹慎処分に。事実上の監禁です。何やら危険です。何と言っても
勝元は丸腰なのですから。
そんな間に街中では大変なことに。勝元の子信忠が刀を取り上げられマゲをきられるという
事態に陥ります。廃刀令はこの時代の1年位前に出ており、持っているだけでも罰せられます。
がしかし、同じ日本人、そして同じ武士であった人間に対し、笑いながらあのようなことが出来る
というのなら最早武士道は死んだも同然であるでしょう。ネイサンはただただ驚くだけでした。
うんざりしたのか呆れたのか、ネイサンはまた酒を飲み祖国に帰る決意をします。男Aも
満足した様子。出発時たかの子供から手渡された習字の文字を見ながら考え込むネイサン。
で。街を歩くネイサンに当然のごとく大村の刺客が。こいつらです。構えからして恐らく中国の
方の拳法だと思うのですが。るろ剣で出てきたえー…上海のへんなクソチビ(組織ナンバー2)を
守っていた4人のでかくて頭は悪い男ども、あれがやってたような感じです。(全然わかんねぇ)
で、それらに囲まれながらもネイサンは習った剣術を駆使してあっと言う間に倒してしまいました。
さっすがー。でもそんな頭の中でリプレイして浸ることかと言うとそうでもないような。
んでかっちゃん(勝元)のところへ向かうわけです。カメラ屋のおっちゃんサイモンは何とネイサン
を大統領ということにして乗り込んでしまいました。いやーこんなムサいヒゲ生やした人が大統領
ですかー。まあホンマもんの大統領は今イラク相手に必死なわけですが。
お約束どおり現れた刺客。間一髪のところで乗り込んだネイサンらと氏尾らが勝元を救出。
しかしその途中信忠は敵の銃弾を受け倒れます。ネイサンが助けたものの、「ここは自分に
任せて早く逃げろ」と信忠は言いました。
己の信念のもとに戦った信忠でした。
里に帰った勝元らは、本格的に戦う決心をします。それは日本軍の元に下るのではなく、
最後まで武士道を貫くという決意です。鉄砲だけでなくガトリングガン、大砲をも所有し始めた
日本軍に、刀で対抗しても勝てないのは誰だってわかります。しかし心までが負けるわけでは
ありません。
最後までサムライとして生き、サムライとして死ぬ。それ以上の喜びがあるでしょうか。
サムライとはそういうものなのだと。
最後の戦いが幕を開けました。
あの赤い鎧をまとい、職人からわざわざ自分のために作られた刀を手にしたネイサン。
氏尾、勝元とともに日本軍と対峙します。
戦いは壮絶を極めました。
半ばまではサムライ優勢だったものの、ガトリングガンが登場しては勝てるはずもなく、
1人また1人と倒れていきました。
最後まで残った勝元もまた。しかし彼は最後の息の中自刃して果てることを選びました。
桜を目に、「完璧だ」とつぶやいて…。
その死は、とうの昔にサムライであることを捨てたすべての軍隊が、ひざをつき、頭を下げ
哀悼の意を示すほど、威厳ある死でした。
武士道とは死ぬことと見つけたり 二つ二つの場にて早く死ぬはうに片づくばかりなり
天皇の元へ現れたネイサンは一振りの刀を差し出します。それこそは勝元が遺言として
ネイサンに託したもの。
天皇はそれを見、今まさに結ぼうとしていた欧米諸国との協定を取りやめます。彼もまた
サムライであった人でした。
それからのち、ネイサンがどう生きたのか、誰も知りません。
しかしサムライの精神は間違いなく今日の日本に受け継がれていることでしょう。己の
信念を貫くこと、大切なものを守ること…。
あなたの心に武士道はありますか?
『汝の運命の星は汝の胸中にあり。』 シラー
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