多分花鳥風月→金田一、コナン的読み物ページ→ちょっとだけ怖い話→話
後ろに
人間の目の機能は、背後を確認するように出来ていない。
それは生物ピラミッドの頂点にある、という生活のために
自然そうなったのでしょうけど。
代わりに気配として感じることが出来る。
その時、振り向くかどうかは貴方次第だけど…。
場所が特定されると困るから、名前は出せないけど。そうね、Aキャンプ場としておきましょうか。
いつものように博士達とキャンプに出かけたその先は、いろいろな設備が整っていて、自然に
親しむというよりは都会を離れても不便な思いをしたくない、にわかアウトドア人間のためのキャンプ場
って感じだったわ。
ミニレストランにロッジ、大浴場にシャワールームもあったしね。
ま、思っていたのと違うのはよくあることだったし、せっかくきたのだから使ってみようかっていう
ことになって私達は食事をした後、二手に分かれてお風呂に入ったのよ。
女性と男性に分かれていたから。
季節外れのキャンプのせいもあって人はそれほど多くなかったわね。数人程度かしら。私達が
遅く行ったから入れ違いで出るような形になって、まあ貸切のようなものだったわ。
男湯との仕切りは少し上が空いていたから、向こうから江戸川君達の声も聞こえてきたし、広々と
したお風呂場でも吉田さんも何も思わず入ってたのね。
私が髪の毛を洗っていた時に、後ろに人の足が見えたのよ。
吉田さん先に上がるのかしらと思ってそう聞いたら、反対側の方向から「まだあがらないよ?」
って聞こえたの。
じゃあ人が入ってきたのかしらと思って、気にせずに洗い流して顔を上げたら誰もいないのよ。
吉田さんに聞いても入ってきていないって言うし。
見間違いにしては、はっきりとペディキュアしていたのも見えたしね。
ま、気にしてても仕方がないから洗い流してお湯に使って、他愛ない話をした後でそろそろ
出ようかっていうことになったのね。
吉田さんは元気に江戸川君達と、上がったら何かジュース飲もうかって話してたけど。
普通浴槽って、一番奥にあるじゃない?間には蛇口やシャワーがあって。
脱衣所に向かいながら歩くと、ちょうどついてる鏡が目線の位置にきて目に入るのね。
その時一番入り口に近い鏡にチラリと人影が映ったの。
こちらに背を向けて浴槽に浸かっている人の背中が。
黒髪がこう、お湯に広がって揺れていたけど。
流石に振り向く気にはならなかったわね。
後で聞いたらあのキャンプ場、昔土砂崩れがあって一帯が埋まったんですって。どうもその時に
お風呂に入っていて巻き込まれた人がいるらしいのよ。
お風呂で髪を洗っている時は、後ろなんて気にするものじゃないわね…。