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ダイイングメッセージ
推理小説によく登場する「ダイイングメッセージ」。
現実には、なかなかそういったメッセージを残した
事件はありません。
この事件はその数少ない中でも多分、
捜査に関わる人間に長らく語り継がれていくことになるでしょう。
その女性が発見されたのは、丁度今のように寒い日の明け方でした。散歩で公園を通りかかった
人が、植え込みからのぞく足を見つけ、110番通報したというものです。女性は帰宅途中何者かに
襲われ殺害された挙句、右手首を切り落とされるという非常に不自然な姿でした。
当初その日別れる直前にケンカをしていたという交際相手――A氏としておきましょう――が疑わ
れたのですが、彼にはアリバイがありまたケンカというのも痴話げんかの域を出ず、彼女とA氏の
周囲の人間関係を洗うことになりました。
ただ、事件発生の夜A氏の携帯に彼女からのショートメールが届いていました。その内容については
伏せますが、ケンカをして別れたばかりであり疑問に思ったA氏が何度か連絡を入れたのですが
つながらず、その時には彼女は殺害されていたものと思われました。
そのショートメールは実は、彼女を殺害した犯人の示す決定的な証拠だったのです。犯人はバイク
に乗って逃走していましたが目撃者が居たことに加えて、メールが決め手となり犯人はすぐに逮捕
されました。
彼女の家の近くにある酒屋のアルバイト勤務で、彼女に気のあった男が、その夜公園で彼女を
見つけ交際を迫ったが断られ、カッとなっての犯行だということでした。その男の部屋の前でA氏が
彼女の携帯番号へかけたところ、部屋の中から呼び出し音が聞こえたことから我々は踏み込み、
犯人を殺人及び遺体遺棄の容疑で逮捕しました。切り落とされ持ち去られた彼女の右手も、携帯
を握り締めたままビニール袋に包まれていました。
…さて、事件はここで解決したのですが、捜査書類を書いていた部下が奇妙なことに気付きました。
彼女の死亡時刻より明らかに後に、A氏へのメールは届けられていたのです。携帯電話会社にも
照会しましたがその時刻、メールサーバに負担がかかったというようなことはなく、犯人もメールに
ついては心当たりがないと証言しました。
つまり、こう考えざるを得ないのです。
彼女が死してその手首が切り離されて尚、犯人の手がかりを伝えるべく指がメールを打った
のだと。
その証拠に、そのダイイングメッセージは犯人が部屋に帰らねば分からない情報だったのです
から…。公園で息絶えた彼女には知り得ぬ事実だったのです。
あなたはどう考えますか?