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食べられない



怖い話の体験談とかありますけど、実際どこまでが
本当なのかなって思います。
結局自分の身に起きたことしか受け入れられない。
大体そんなもんじゃないですか?





 私はお蔭様でどんなに疲れていても普通におなかはすくし、多少忙しいくらいじゃめげないです。
眠ったら大体疲れは取れているから、1週間平均睡眠時間が3時間とかでもなんとかなったり
します。まあ皆そんなもんだと思いますけど。
 だけど、それぐらい忙しい時って、幽霊とかそういうものに詳しい人間によると、私はそっち方面が
ノーガードになってしまうらしいんですよ。そうですね、鍵のかかっていない家みたいな感じなのかな。

 それもそんな丁度忙しい時のことでした。忙しい時は自炊する体力もないので、もっぱらコンビニ
にご飯を調達しにいくのですが、何故か猛烈におなかがすいているのに、食べる気がしないんです。
どーいったら良いのかな。すっごい食欲はあるのに、食べ物が視界に入った途端うんざりしてしまう。
 こういったことはまったく体験したことがなかったので驚きました。別に胃腸の調子は悪くないし、
満腹だったわけでもありません。むしろおなかがすいてるからコンビニに来たわけで。
 ウロウロしているうちに、蕎麦が目に入りました。すると何故だか突然それを食べなければならない
気になって、購入してしまいました。私わりとコンビニのお蕎麦は好きじゃなくて、どちらかというと、
暖かくて自分で具を入れる蕎麦が好きなんです。だからあんまりコンビニで蕎麦を買ったことがない
んですね。
 それでも家に帰ってくると、さっき猛烈に欲しいと思いはしたものの、食欲がなくてその蕎麦をもて
あましてしまいました。おなかはすいているのに、その蕎麦の匂いでうんざりしてしまうのです。
 でも食べないと仕事再開になりませんから、無理矢理食べました。一口目からはきそうになって
しまい、押し込むようにして食べたのですが、この症例から何か消化器系に疾患があるんじゃないか
と思ったぐらいです。

 しかし、そんな思いをしたのはその時だけで、夕食や翌日の時はまったく普通に食事をとることが
出来ました。
 何故こんな体験をしたのか分からないまま、後日友人に話をしていたら、「物が食べられなくて
亡くなった人がおりてきた場合の症状とそっくり」といわれました。そういう霊が憑いた場合、目の
前のものがどうしても食べたいのだけれど食べられない、という状態になるそうです。
 そんなバカな、と笑おうとした私ですが、直後に心当たりを思い出しました。蕎麦が大好物で、
丁度ガンのために物が食べられず点滴状態になっている人物のことを。その時期は確か意識が
混濁していたはずでした。
 そういえば、ここ2週間ほど続けて、その人物の夢を見ていた時期でもありました。楽しい団欒
のはずなのにその人物は一言も言葉を話さず、目が覚めて楽しかった夢のはずなのに現実と
比べて寂しい思いをしたのを覚えています。
 入院する3ヶ月くらい前からものが食べられなくなっていましたので、きっとどうしても食べた
かったのでしょう。私とその人物の食べ物の好みは似ていると、親戚でも言われていましたから、
私に憑けば食べられると思ったのかもしれませんね。
 その人物が亡くなると同時にぴたりと夢は見なくなりました。今度仏前に蕎麦を供えてこようと
思っています。


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