多分花鳥風月金田一、コナン的読み物ページちょっとだけ怖い話→話


踏切



道路でもそうなのですが、ふと目をやると、
花束がおいてあることがあります。
そんな時私はそれを見なかったことにして
通り過ぎます。
ジッと見ていると何かが寄ってきそうだからです。





 ほんのついこの間のことです。
 国道沿いを自転車で走っていました。日も高く結構な気温で、汗をかきながら目的地に
向かっていました。
 そんな折ふとそれが目に入りました。踏み切りのそばに添えられた大きな花束。あわてて
目をそらしましたが、真っ白なユリが目に焼きついていました。
 私はそういうのはすぐに忘れるようにしています。そういったものがあるということはつまり、
そこで事故があって、まだ死者がさまよっているということだからです。
 嫌な予感がしました。右半分が急に体温を奪われたかのように冷たくなるのがわかりました。
同時に、足に何かがまきついた感触があり、まるでペタリと何かで覆われたかのように感覚が
なくなりました。しびれている…というのでしょうか、叩いてもつねってもなんの感覚もない
のです。
 まずいことになった、いつもつけているお守りを今日に限って忘れてしまったのが悔やまれ
ました。
 同時に何故か自転車のハンドルが不安定になり、道路に向かって斜めに曲がるような
感じで走るのです。慎重に走らせましたがやっぱり何かをつれてきてしまったのは間違い
ないようでした。
 幸い目的地は人の多いところであり、そこにどさくさにまぎれておいてきたのですが、
足の、そこだけクーラーの冷気を当てたかのようなしびれた感覚はしばらく治りませんでした。

 ただ、この話は続きがあります。
 帰り道、そこは一本道のためどうしてもそこを通らねばならず、私は急いでペダルを
踏んで通り過ぎようとしました。道路に視線をそらしがちになりますが、その時道路で
くねる黒くて細長いものが目に入りました。
 大きさはちょうど、4、5歳の子供くらいの、黒くて円筒形のものがくねっていました。
わけもわからずもうこれはまっすぐ見て走るしかないと通り過ぎました。通り過ぎる際、
それのたてるズリッズリッという音がひどく不快なものに聞こえました。何故か交通量の
多い道路であるはずなのにその十数秒間、車どころか人影すらありませんでした。
 そして少し通り過ぎて振り返った時、その物体はどこにもいなくなっていました。
一本道であり、片側は山、片側は海です。一体それはどこに消えてしまったのか。
 真昼に体験した、久しぶりに背筋の凍る出来事でした。当分あそこは通りたく
ありません。
 


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