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同乗者
数多くある体験談ですが、私もついに体験したみたいです。
こういう時大切なのは、冷静に行動すること。
それを痛感しました。
たまに深夜、1人もしくは友人とで車を走らせることがあります。
夜の運転は好きではないので、大抵レイトショーで映画を見た時に限られるんですが。
その後はお気に入りの書店に行くのがお決まりのコースです。
その夜は運悪く雨が降っていました。タダでさえ夜は視界が悪く、雨ともなると本当に
さっさと家に帰りたいものです。
普通はそう考えますが、いつものコースを取りやめると気分が悪いもの。私はいつも
通り本屋に寄る事にしました。
ところが考え事をしていたせいか、いつも通る道を素通りしてしまい、大回りのコースへ
車を進ませてしまったのです。
まあそちらからでも行けないことはないのですが、幹線道路だからなのか深夜は飛ばす
車が多く、あまり好きなコースではありませんでした。
私は雨であることを考えてややスピードを落とし気味に運転していました。
目の前にあるトンネルが見えてきました。
トンネルに入ったのでワイパーを止め、スピードがちょっと落ちすぎていたのでアクセルを
踏もうとしました。
しかし結構踏み込んでいるのに何故かスピードが出ません。
エアコンを作動させたりしているとスピードが出ないことがありますがそれもなく、整備も
したばかりですから異常は考えられません。
すると突然、車の後ろが荷物を載せた時のように重くなるような錯覚にとらわれました。
重いダンボールを乗せたりすると分かるかと思うのですが、あの、グッと沈み込むような
感覚は独特のものです。
スピードがついに40kmあたりまで落ちました。アクセルを踏み込んでいるのに、です。
それと同時に車内には私1人だけであるにも関わらず、人の気配がし始めました。
これはやばい、と思ってもうスピードも重さも考えないようにし、トンネルを抜けることに
集中しようと、前だけを見ることにしました。
…そういう時に限って、視界の端に手が見えたりするものです。
運転席の窓ガラス外側、這って来る青白い手首から先の手とか。
視界の端で見ているはずなのにハッキリ認識できました。
それは本当に長く感じられた時間でした。
トンネルを通っている時間自体は多分30秒もなかったかと思います。
トンネルを出ると同時にフッと車は軽くなり、変な気配も何も消え、車は普通に60kmで
走り始めました。それまでどんどんスピードが落ちていったのがウソのようでした。
本屋についてから車を一応点検しましたが、特に異常も見つからず、少しして私は昔
大学の先輩から言われたことを思い出しました。
「あのトンネルな、上が墓場やねんで。墓場だったところをトンネルにして、墓を上に移した
もんやから、その近くの公園で夜カップルとかが車の中から星を見てたりするとな、いつの
間にか囲まれとるっちゅー話や――」
二度と夜あの場所は通りたくありません。