多分花鳥風月金田一、コナン的読み物ページちょっとだけ怖い話→話


視界の端に



ふと気を抜くと横に立っている。
気がつけば視界から消える。
次の瞬間耳元で囁かれる。




 何かが視界の端を横切ったような気がするということはよくある。
 ただそれが頻繁にかつ、現実味を帯びてくるというと少し話は違ってくるような気がする。

 例えば顔を洗っている時。
 明確に見えない位置に何故か立っている下半身だけが鮮明に映る。イメージできる。

 パソコンのモニターを眺めている時。
 モニター左隅から机にかけて、かすめるようにして何かが飛んでいく。

 見上げた窓の隅から何かが顔を引っ込めるようなしぐさ。

 すべて気のせいと片付けてきたのだが、どうにも納得がいかない。
 目の機能に問題はない。
 
 居酒屋で一杯やっていた。
 カウンターで、背中に店内の喧騒を受けながら「さて明日の予定は」と考えていた時、
視界の端にコップを置く手が見えた。
 赤いマニキュアの爪までわかった。
 水を入れてくれたのかと礼を言いかけて、止まった。
 俺のそばには誰もいやしなかった。
 酔いすぎたかと頭を振って立ち上がろうとしたら両肩がずしりと重くなった。
「ここにいるよ」
 声はそう言った。
 もちろん後ろにも誰もいやしないのである。



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