多分花鳥風月金田一、コナン的読み物ページちょっとだけ怖い話→話


何かを呼ぶ本



世の中には呪われた宝石、
呪われた車など、何かが憑いている
というものがあります
それが本だったところで…
珍しくも何ともないのかも知れません。





 その本を見つけたのは今からもう10年前にもなります。
 何気なく入った小さな古本屋。天井近くまで本が積み上げられていました。
 そこで何を探すわけでもなくあちらの棚こちらの棚と見ていた私はふと、何かに呼ばれた
かのように目をあげました。
 そこにその本達はありました。まるで目があったかのような、そんな感覚でした。

 天井近くにあったその本の束をどうやってとったのか、何故かそれは覚えていません。が、
私の手の中にありました。長いこと売れなかったのか、大抵半値で売られるはずの
ところが50円の値札がついており、私は迷わず購入を決めました。
 その本は先ほどまで誰かが大切に懐に入れていたかのように、否、まるでオーブンに
でも入れていたかのように熱かったことを覚えています。

 その夜のことでした。買ってきた本を枕元に積み上げ、まずは1冊目と手にとって読んで
いた時です。窓の外に、不意に何かの気配を感じました。
 アパートの裏は駐車場になっているので人がたまたまそこに入り込むというのはたまに
ありますし、学生アパートですからふざけて通る人もいます。
 ところがその気配は足音をさせながら駐車場側に回り、玄関の方へ回り、また窓のところに
戻ってきたようでした。流石にここまでいくと不審に思い、スタンドの明かりを消して相手の
様子を伺うことにしました。
 でもその気配は一向に立ち去ることなくぐるぐるとアパートの周囲を回り続けました。
その音が遠ざかっていったのは、そろそろ夜も明けようかという頃だったと思います。
 誰かがそこにいたこと、それがこの世のものではないだろうというのは地面の様子を
見てすぐに見当がつきました。アスファルトで舗装されたところをその何者かはずっと
何かをひきずるように、砂利道を歩くかのような音を立てて歩いていたからです。
ジャリッ、ジャリッ、ジャリッ…と、ゆっくり確かめるように。

 大学に行きその不思議な体験をある友人に話したところ、購入した本のタイトルを
聞いて友人は納得したように、「ああそれは、その本の次の購入者を確認しにきた
んじゃないかな」と言いました。なるほど、と納得した答えでした。

 今でもその本達は私の手元にあります。そして読み返そうと開くたびにいくつかの
不思議な出来事が起きるのです。



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