多分花鳥風月金田一、コナン的読み物ページちょっとだけ怖い話→話


窓をたたく手



唯一の、集団で経験した目撃談です。
今でもあの手は宿泊客を驚かせているのでしょうか。





 子供の頃の、修学旅行での話です。
 そのホテルは古くからあるのか、今から思えば増築が繰り返されたような感じで
雰囲気も暗くあまり居心地のよさそうな場所ではありませんでした。
 案内された所は窓が大きくとられた団体客用の部屋で、早速寝る場所の取り合いと
いった感じで荷物を置き、それぞれが自由時間を楽しんでいました。

 夕食も終わりその日は外出時間はなかったので皆部屋に戻ってきてトランプを
したり雑談をしたりとそれぞれにすごしていました。数人、出窓に腰をかけていて、
私と何人かの友達がそれに向き合う形で話をしていたと思います。
 その時。
 バァン!というものすごい音とともに窓が割れんばかりにゆれて、出窓に腰をかけて
いた友人らはあわてて飛びのきました。が、何もぶつかった様子もなく、窓には何の
跡もついてなく皆不思議がるばかり。
 しかし私やその他、窓に向き合う形で座っていた人間は全員が目撃していました。
 確かにその瞬間、べっとりと赤く染まった手のひらが窓を激しく叩いたのを。
 もちろんそんな跡も残っていませんでした。

 入浴の時間が来て、浴場に行った時も立ち上る湯気の中、天井をぐるぐると輪を
かいて飛んでいる白い浮遊物を見かけましたし、その部屋で寝ている時もなぜか
夜中押入れの戸が何度も開け閉めされたり、一晩中男の声でブツブツささやくような
現象があったりと、とにかく変なことだらけでした。
 
 今でもそのホテルがあるのか知りません。
 しかし二度と行く勇気はありません。


 


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