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人影
覗き込んだ中にだけ見える人たち。
一体どこの世界が見えているのでしょうか。
ATMには大抵鏡がついていて、後ろの様子を見ることができるようになっています。
あそこにはカメラが仕掛けてあって、鏡はマジックミラーになっているということですが、
それでも防犯としては便利なものです。
私は機械がお札を数えている間や処理をしている間、この鏡を覗くというクセがあります。
その日も、何の気なしに鏡を見ていました。私の後ろには、足元を見ているらしいサラリーマン、
そしてドアが開いて入ってきた数人といった感じで見えました。
何人かがサラリーマンの後ろに並んだのが見えたので、早くしなければいけないと思い、サッと
出てきたカードなどをバッグに入れて振り返ったときです。
愕然としました。
ATMコーナーには、私以外誰もいませんでした。
人影を確認してから振り返るまで数秒。その間に、この広いコーナーから外に出て行ける
余裕があるとは思えません。
よくよく考えてみれば、開閉の時に大きな音がするはずの自動ドアも、人が入ってきた
時に音がしていませんでした。
鏡を通して見た人たちは一体誰だったのか。
それからも鏡を見ては後ろを振り返って確認する私がいます。