明智警視が…？

　8月中旬に入ってから明智警視を取材のため訪れても、不在の日が続いた。剣持警部に
聞いても明確な理由は得られず、連日続く猛暑で夏バテ休養か？というような噂も飛び交って
いた。明智警視といえば常に捜査本部を抱えて忙しい管理官の中でも珍しく現場主義で、
刑事らと捜査していることも多い。そんな警視が激務で休養というのもわかる。
　しかし真実はまったく違っていた。
　明智警視は捜査のため特に許可を取ってお隣中国へ飛んでいたのだ。

　中国といえば北京オリンピック開催真っただ中。捜査がてら見物もされたのでは…。

「とんでもない。むしろ帰国するまでまったく思いだしもしませんでしたね。捜査で来ているのに
呑気に見物なんかしていられません」
　なかなか厳しいお言葉である。
　ではどのような捜査をしていたのか。
「送検したばかりなので詳しくは言えませんが、麻薬密売ルートにかかわる殺人事件です。
犯人がツテをたどって中国に潜入したという情報があったのでね。部下数名をつれて、ビジネスマンを
装い、入国していました。もちろんこのことは上層部の限られた人間しか知りませんから、傍目には
私が突然長期休暇を取ったように見えるでしょうね」
　
　中国政府や現地警察にも身分を伏せての捜査であり、一歩間違えれば拘束される危険もあった
ため、明智警視が任命されたのだという。確かに普通の刑事では危機的状況を切り抜けるのは
難しいだろう。
「まあそれほど危険ではなかったので、それは喜ぶべきところでしょうね。この通り無事容疑者も
確保できましたから、任務完了といったところでしょうか。え？庁内では私が夏バテでダウンしたことに
なっているのですか？それは…噂の出所をぜひ突き止めなければいけませんね…」
　警視庁は一足先に涼しくなりそうである。

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※これら掲載の記事はすべて実際の事件・団体等に関係の無い架空の物です。

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