誰？強盗を取り押さえて立ち去る

　まだ肌寒さが残る7日。都内の宝石店で不思議な事件が起きた。
　昼下がりの店内では、宝石フェアを目当てに押し寄せた客でごった返していた。
　そんなさなか、覆面をした男3人が突如店員に銃を突きつけ「売上金を出せ」と脅し、
店内にいた客を人質にとった。
　店員の一人がとっさの判断で防犯ベルを鳴らし、約１０分後に警察が駆けつけた。
　しかしその時には既に強盗団は全員ガムテープで縛りあげられており、客及び店員は
全員店外へ退避していた状態だった。
　わずか10分の間に何があったのか。

　最初に銃を突き付けられたという店員のＡさんにインタビューした。
「私も何が何だか…。とにかく怖くてよく覚えていないのですが、誰かが押した防犯ベルの
音が鳴り響いて…その後何か爆発音がしたので、てっきり犯人が銃を撃ったのだと思いました。
そのあと店内に煙が充満して、気がついたら犯人は縛られていて、「外に出よう」という声がした
ので無我夢中で逃げました。私も何が起きたのか知りたいくらいです」

　カウンターから離れたソファに座っていたという客のＢさんはこう語る。
「ええと…私は音楽をイヤホンで聞いていたので、最初気づくのが遅れて、何が起きたのかわから
なかったんです。顔をあげたら犯人の一人が目の前にいて、隅に行くように言われました。
　その後隣にいた、野球帽をかぶった男の人がサッと立ち上がって、ええと…ブザーみたいな
音がして、煙で何も見えなくなって、あとは皆と一緒に外に出ましたね。
　ああ、そういえばその男の人は「先に手を出されては台無しだな」みたいなことを言っていた
気がします」

　警視庁の調べで、今日になってこの宝石店には、ＫＩＤの予告状が届いたことが分かった。
　宝石フェアで展示されているメインの宝石に対してのもので、警視庁では、今回の事件との
関連性は分からないが、たまたまＫＩＤが下見に来ていた可能性もあるとして、改めて捜査を
行っている。

　ＫＩＤを追い続けている中森警部は、「ＫＩＤが宝石を横取りされると思って強盗団を捕まえたに
違いない！何も取られなくてよかった！？バカ者！これからＫＩＤが盗みに入ると予告してきて
いるだろうが！」と、鼻息も荒く、宝石店へ警備の打ち合わせに向かった。
　宝石店にとっては一難去ってまた一難かもしれない。
　しかし店長は「被害を未然に防いでくれたのがＫＩＤなら、この予告状は天の助けのようなものです。
もちろん宝石を盗まれてはかないませんが、早くもお客様から「ＫＩＤが狙っている宝石とはどんな
ものか」というお問い合わせもあり、予告の日まで沢山のご来場が見込めそうです」とホクホク顔。
　どうやら災難だったのは、強盗だけになりそうである。

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※これら掲載の記事はすべて実際の事件・団体等に関係の無い架空の物です。

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