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5.撃ち抜かれた脊髄

自分がまず文句無しに読めるもの、として思い付くのが「Q.E.D」というマンガ
である。小説を挙げられないのが不甲斐ない点であるのはひとまず置いておくと
して、推理物と言えばすぐ連想されがちな殺人事件ばかり扱っていないところが
好感が持てた。

自分のような一般人にも矛盾なく読めるこれらの話は、恐らく膨大な資料の下に
吟味され推敲されて世に出たものなのだろう。もちろん、数学や物理、美術に音楽
などといった専門分野に身を置く人間から見ればそれなりの粗はあるのかも知れ
ないが、普通に目を通す限り納得できる構成だと思う。

ただ、ひとつだけ非常に惜しいミスと思われるものがある。
ある男が自分の口に拳銃をくわえ引き金を引き、自殺を図るのだが死にきれなか
った…という下りである。
医学の知識が無い人間でも、脊髄が破壊されれば死ぬか、植物状態になることぐ
らい高校の生物(今は中学だろうか?)で学ぶ。
拳銃は門外漢なので知ったように述べるのもどうかと思うが、一般に近距離での
発射(接射という)は弾の入り口よりも出口の方が大きくなり星状になる。絵を見る
限りリボルバーらしいので、入り口が多分1センチくらいなのに対し出口はギザギ
ザでもう少し大きいはずだ。
問題は、発射された部位だ。口の中で発射し首の後ろを撃ち抜いたが死にきれな
かった、と言っていたが、首の後ろには「脊髄」と言って簡単に言えば脳からの命令
を体に伝える大切な機能がある場所だ。自分と同じ世代の方なら、「必殺仕置
人シリーズ」というドラマで首の後ろを刺すシーンをご記憶の方もおられるだろう。
脊髄を損傷して下半身不随や植物人間になるケースもある。呼吸中枢をやられて
死に至る場合もある。いずれも首を痛めたりした結果である。
だがこの場合撃ち抜いているのだから、空砲ででもなかった限り弾のエネルギーに
よって脊髄は粉々に破壊される為、その後に出て来たような健康体ではとてもいら
れない。
話の筋を読む限り無理に口の中を撃ち抜かなくても、こめかみに銃口を当てて引い
たが空砲が入っていた。衝撃で気絶し、その後の計画を思い付いた。というもので
良かったのではないかと思う。(もちろんこめかみを撃っても、健康体に戻る確率は
低く、良くて植物人間悪くて即死である)
なまじこれまでの話が完成度の高い作品であっただけに、こんなケアレスミスが
残念でならなかった。
一応後学の為に、脊髄を撃ち抜いて死ななかった例があるか調べておこうとは思う。



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