多分花鳥風月金田一、コナン的読み物ページ小説置き場→高遠遙一の回顧録(「高遠遙一の回顧録」より)4-1




最終回に際して

 実は、皆さんにある告白をしなければいけません。私こと中田良夫は記者として
真実に迫りたいという考えのあまり、当然すべきことをしませんでした。
 それは、警察への通報です。
 ですがある条件と引き換えにもたらされた真実は、耐えがたい魅力だったのです。
 言うなれば舞台裏を覗くようなものかも知れません。

 この連載小説が人気を博してくるにつれて、いつからか(これでいいのだろうか)という
罪悪感を覚え始めました。
 私は、誰がどうやって三田秋彦氏を殺害したか知っています。
 そう、この小説はフィクションではありません。皆さんがすでにお気づきのとおり昨年
十一月に起きたあの事件です。
 私は、犯人の口から聞いたのです。
 その方法について今回は述べることとし、これを書き上げたら私は警察に犯人を隠匿
していたとして自首しようと思います。
 三田秋彦氏を殺害した犯人、それは
















<編集部注 
 これは落丁ではありません。弊社記者中田良夫氏は、原稿締切日この最後の原稿を
郵送してきた後、消息を絶ちました。
 全力をあげて捜索いたしましたが彼の行方はようとして知れず、先日東京湾にて、
無残な水死体となって発見されたのは皆さんご承知の通りと思います。
 もはや我々には真実を知るすべはありません。
 ただ、彼の死を無駄にしないためにも、こうして一冊の本として、彼の遺作として
出版しました私共の思いをご理解いただければ幸いです。
 尚出版に際し、三田氏のご芳名はご遺族の了承を得た上で実名掲載とさせて
いただきました。>

















 パタンと小気味良い音を立てて本が閉じられた。もう片方の手に握られた細長い
二つの木片からは、テグスのようなものが伸び、それをたどると三十センチほどの
人形につながっていた。
 何やら秘密結社を連想させる不気味な仮面をつけたそれは、手の動きに合わせて
小ばかにするような動きを見せた。ひょこりひょこりと、自由を求めるかのような
マリオネット。
「無粋な種明かしはいらないんですよ。限られた、特別な観客を除いてはね……」
 カーテンがピタリと閉じられた窓。そのわずかな隙間から差し込む光は、しかし
彼の顔を浮き上がらせるほどではない。
 暗闇に忍び笑いがしばらく響いていた。


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